【3月23日 東方新報】中国の山東省(Shandong)菏沢市(Heze)にある曹県(Cao)は十数年前まで貧困地域だったが、今では地域で最も豊かな県となった。収入が高い街として、ジョークで「北上広・曹(北京市、上海市、広州市<Guangzhou>・曹県)」と言われるほどに。急成長の理由は「日本の棺おけの里」とコスプレ風民族衣装「漢服の里」として、二大産業を軸に発展を遂げたことだった。

「昨年、BMWのセールスが村にやってきて、3日足らずで村民が8台購入しました。今年はアウディ(Audi)も来ましたが、繁忙期でみんな忙しく、4台しか売れませんでしたね」

 曹県孫庄村の孫康佳(Sun Kangjia)党副書記はそう話す。曹県にはこうした「金持ち村」が数多くある。

 曹県の面積は大阪府と同程度の1967平方キロで、人口は約170万人。木材加工業以外に目立った産業はなく、住民の多くが出稼ぎをする「労働輸出県」と言われていた。

 そんな中、高品質の桐(きり)の木が豊富なことから、日本の棺(ひつぎ)製造を手がけることになる。成長が早く、軽くて湿気に強く、燃えやすい桐は棺作りに適している。曹県の材木加工企業は日本の葬儀文化や礼儀を学び、従業員を日本で研修させながら、日本側の厳しい品質要求に応じて棺を一つずつ手作りしている。棺の製造企業・工房は数千社に及び、一社だけで30万基の棺を作っている会社もある。あるデータによると、日本の棺の9割は曹県で作られている。

 曹県がさらに飛躍を遂げたのは、「漢服」の生産による。中国ではここ数年、伝統文化をファッションやライフスタイルに取り入れる「国潮」文化がブームとなっている。その一つとして、漢や唐などの時代の衣装をオシャレに仕立てた「漢服」が若者の間で人気となり、グループで漢服を着て花見をしたり、SNSで投稿したりしている。

 曹県は昔から、葬式で故人に着せる着物や舞台衣装の製造も盛んだった。その応用で早期から漢服を手がけ、今では関連企業は2000社を超え、漢服の3分の1は曹県で作られているという。

 販売はインターネットを通じて行われ、売上額は4億元(約76億5600万円)に上る。阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)の通販サイト「淘宝(タオバオ、Taobao)」は、ショップ数が世帯数の10%以上、年間取引額が1000万元(約1億9023万円)以上の地域を「淘宝村」と認定しており、曹県は全国の「淘宝村ベスト100」で第2位となった。

 2018年以降、曹県には9万7300人が故郷に戻って仕事するようになり、就業者の平均年齢は以前より5歳も若返ったという。かつての貧困県は、地方で自立した成長を成し遂げられる成功モデルとなっている。(c)東方新報/AFPBB News