【2月27日 東方新報】中国では「○一代」「○二代」という呼称をよく見かける。「富二代」なら、改革開放政策の波に乗ってビジネスに成功した富裕層の子どもたちを指す。「官二代」は、親の特権的地位を振りかざして進学や就職等で不正に利益を得る人びと。逆に、経済成長の恩恵を受けられなかった貧困地区の人びとは「窮一代」、その子どもは「窮二代」といった具合だ。

 その中で「独一代」という言葉も登場する。1980年代から全国的に広がった「独生子女(一人っ子)政策」のもとで生まれた世代を指す。初期の独一代はすでに40代に突入し、年老いた親の介護問題に直面している。一人っ子同士が結婚した「双独」夫婦なら、4人の親の面倒を見ることになる。

 中国の大手ソーシャルプラットフォーム「豆瓣(Douban)」では「一人っ子の両親養老交流会」というグループがあり、成人した一人っ子8万人が登録。親の病気や年金、保険、介護について相談している。

 2歳の子どもを持つ女性は以下のような詳細な書き込みをした。

「我が家の月収は夫婦で計2万元(約39万1780円)ありますが、住宅ローンとマンション管理費で月6000元(約11万7534円)、育児費用に2000元(約3万9178円)、自動車ローンとガソリン代に5000元(約9万7949円)、それ以外の生活費が4000元(約7万8356円)かかります。毎月最低で計1万7000元(約33万3013円)が必要です。3000元(約5万8767円)は残る計算ですが、予定外の出費は常にあります。子どもが大きくなれば、教育費がどんどんかさんでいきます。いま遠方にいる夫と私の両親が重病になったら、医療費を払う余裕はありません」

 中国の第7回国勢調査によると、2020年で65歳以上の人口は全体の13.5%にあたる1億9000万人。国際的には65歳以上が7%に達すると「高齢化社会」、14%に達すると「高齢社会」となる。急激な勢いで「老いる」中国で、独一代たちが高齢者たちを支えることになる。

 あるインターネット上の調査では、成人となった子どもの6割は親と別の都市に住んでおり、親と会うのは「年に1~2回」と回答している。最近は養護老人ホームも増えているが、SNS上では「離れて住む親に老人ホームの入居を進めたら、『親を捨てる気か』と泣かれてしまった」という書き込みがしばしば見られる。日本でも特別養護老人ホームの普及が始まった時期、「親を捨てる」かのように言われた時期があった。中国では「親の老後は子どもが面倒を見る」という意識が今も根強いため、事情はさらに深刻と言える。独身の一人っ子の場合、都会での暮らしをあきらめて実家へ帰り、親の世話をせざるを得ない人も少なくない。

 厚生労働省に相当する国家衛生健康委員会は、高齢者のケアについては「9073モデル」を推進するとしている。老後を自宅で暮らす人が90%、地域のコミュニティーを基盤に過ごす人が7%、施設に入所する人が3%という構成。1人暮らしの高齢者にはベッドに体温や心拍数の計測装置を、室内に感知センサーを取り付け、異常があれば家族や地域の管理センターに連絡する「ITケア」を広めようとしている。ただ、IT化・スマート化によるケアが万全かどうか、さらに農村部に取り残された高齢者らのケアをどうするかなど、課題は多い。

 最近のZ世代の一人っ子は「頼れる財布が六つある」と言われている。両親(2人)とそれぞれの祖父母(4人)の計6人から支援を受けられ、豊かな暮らしを享受していることを意味する。しかしそれは将来的に、「両親と祖父母の6人の面倒を見る」という「独二代」になることでもある。中国では現在、1組の夫婦に3人までの出産を認めるようになったが、その効果は少なく出生数は減少の一途をたどっている。若者の間では結婚をしない人も増えている。今後、「独一代」「独二代」が抱える問題はさらに深刻化していくことが予想されている。(c)東方新報/AFPBB News