【4月8日 AFP】ウクライナ最西部ザカルパッチャ(Zakarpatska)州の州都ウジホロド(Uzhhorod)で、少数民族ロマ(Roma)のビクトル・イリチャクさん(31)は、ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領の署名が入った勲章を誇らしげに見せてくれた。8か月前線で戦い、「4回死にかけた」と話す。

 イリチャクさんは、ロマが多数を占めるラドワンカ(Radvanka)地区にある、今にも崩れそうなぼろぼろの自宅で、AFPのインタビューに応じた。自宅前の道は穴だらけだ。

 腕には、マリウポリ(Mariupol)近郊で受けたロシア軍の爆弾の破片がまだ残っている。

 ウジホロドのロマたちは、ロマ兵士の戦いぶりやウクライナ人避難民を支援するロマ団体のおかげで、ウクライナ人のロマに対する根強い偏見が少しずつ改善していると指摘する。

 4人の子どもがいるイルチャクさんは、第128ザカルパッチャ旅団(The 128th Transcarpathian Brigade)で戦車の修理を担当していた。「前線ではロマかどうかということは関係ない。お互いを兄弟だと思っている」と話した。

「読み書きのできないロマが軍隊で戦えるのかと疑問視する人も多かった。ロマが戦っていると言ってみんな驚いていた」「彼らにはこう言ってやった。ウクライナ人なら、ウクライナのために戦わなければならないと」

 イルチャクさんの義父は「ロマは従軍しないと言われていたが間違っている!困った時には私たちだって頼りになるんだ!」と叫んだ。

■素晴らしい支援

 ザカルパッチャ州はウクライナで最もロマの割合が多い。ウジホロドの複数のロマ団体は、侵攻以降、非ロマ住民の態度に変化があったと指摘する。

 ロマの女性の技能習得や職探しを支援する団体「ロマ女性の声(Voice of Romni)」の代表アンゼリカ・ビエロワさんは、ソーシャルメディアで「ロマの人たちがウクライナ人を支援してくれた、素晴らしい」といった声が多く聞かれるようになったと指摘する。

 同団体は侵攻後、ロマ人以外の避難民の支援を始めた。

 ウクライナ各地に約40万人のロマが住んでいると推定される。ロマの人々は長年、貧困や差別に直面し、社会から疎外されてきた。ロシアによる侵攻は、ウクライナ東・南部に住んでいた推定17万人のロマに新たなトラウマをもたらした。

 ロマ避難民は公的な書類がないことも多く、国境検問所や人道支援の列で差別を受けたこともあった。