多くの惨禍と将来へのかすかな希望 イラク戦争開戦20年
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■「つらい混乱」
3人の子どもを持つサウド・ジャウハリさん(53)は、1980〜88年のイラン・イラク戦争が続く中で育ち、アマチュアのサイクリングクラブを主宰することで、女性や子どもたちがより多くの喜びを得られる機会をつくろうとしてきた。
「戦争の最中に子ども時代を過ごしてきた」とジャウハリさん。「私たちは楽しむこともできず、多くのものを奪われてきた」という。
少数民族クルド人のシーア派として、家族の友人や隣人たちがフセイン政権による反体制派弾圧が最も激しかった時に国外追放になった当時の状況を記憶している。
いとこが投獄された際、おばは悲嘆に暮れて亡くなったと記憶の糸をたぐった。
ジャウハリさんは、家族が安全のために避難していたイランでフセイン政権の崩壊を見届けた。
2009年に母国に帰国。「永久的な亡命生活はつらすぎる」との思いから、暴力が続く中でも「どのような状況だろうと」イラクにとどまることを決意した。
ISが打倒された17年、イラク社会の保守的な慣習に挑戦する形で街頭で初めて自転車に乗った。
ジャウハリさんは「社会からの視線が怖かった」と、女性が屋外で運動するのは不適切と考える人たちの存在に話を向けた。
それでも挑戦し続けてサイクリングクラブを立ち上げ、悲惨な状況の中でも彼女のような人々に少しでも喜びを届けようとした。
「私たちの人生は20年間に及ぶつらい混乱に終始してきたが、時間を取り戻すことはできない」と訴える。
だが、ジャウハリさんは戦禍に苦しんできたイラク人としては、前向きとも言えるようなことを口にした。「これまでに経験してきた以上に悪いことはもう起きないはずだ」 (c)AFP/Laure AL KHOURY