【3月7日 AFP】兵器を模した風船状のおとり「バルーンデコイ」を製造するチェコ企業インフレテック(Inflatech)は6日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって以降、製品への需要が急増していると明らかにした。

 バルーンデコイは合成繊維製。送風機で膨らませ、戦場でかく乱やおとりとして使われる。

 インフレテックの幹部は、製品をウクライナに販売しているかには触れず、「欧州だけでなく世界中の多くの国に販売している」とだけ述べた。生産量は1年間で倍増したという。

 マーケティング部門の責任者ポベン・クマレサン(Poven Kumaresan)氏によると、従業員約30人で毎月30~40個を製造している。

 バルーンデコイのモデルには、戦車や装甲車、戦闘機などがあり、重量は25~90キロ、設置には2~4人を必要とする。

 クマレサン氏によると、モデルとなる兵器の設計図があれば72時間以内に図案を作ることができるが、「ゼロから」作業する場合は最長で2週間かかる場合もある。

 高機動ロケット砲システム「ハイマース(Himars)」モデルの出荷には、注文から60日かかったという。インフレテックはこれまでにハイマースモデルを「数十個」出荷した。

 バルーンデコイは軍需品に分類されるため、当局の承認を受ける必要がある。

 インフレテックのボイチェフ・フレッサー(Vojtech Fresser)最高経営責任者(CEO)は、見た目が本物そっくりであることが重要だとして、「150~200メートル離れたところから見れば、双眼鏡でもない限り本物の兵器なのかデコイなのか見分けがつかない」と述べた。

 膨らませるのに使うエンジンが熱を発するため、敵の赤外線センサーも欺くことができるという。

 価格は1個1万~10万ドル(約135万~1350万円)で、デコイの破壊に使われるロケット弾よりもはるかに安い。フレッサー氏は「敵に4~20倍も高価な兵器を使わせることができれば、経済的には勝利となる」と語った。同社はバルーンデコイを移動可能にすることも視野に、改良を重ねている。

 インフレテックは元来、訓練用のバルーンデコイや、オーダーメードの玩具などを製造していた。フレッサー氏は、同社の生産量にも製品の種類にも「限界はない」として、今後3年間で急成長する見通しを示した。

 フレッサー氏は「もちろん、子ども向けの玩具を作りたいが、まず第一に、子どもたちのために安全な世界を確保しなければならない」と語った。 (c)AFP