【2月15日 東方新報】「春節シーズンは満員でびっくりしました。この3年間、そんな光景見ませんでしたから。どの時間帯も人がいっぱいで、ポップコーンをすくってばかりいたから腰と腕が痛くなりましたよ」

 中国・南京市(Nanjing)市内のシネコンで働く女性は、当時の忙しさをそう振り返る。中国は3年にわたるゼロコロナ政策が終了して、初めての春節(旧正月、Lunar New Year、今年は1月22日)を迎えた。その喜びもあってか、春節連休中は全国の映画館は連日、人でごった返し、コロナ前の活気をほぼ取り戻したようだった。

 国家映画局によれば、旧暦の大みそかも含めた春節シーズン(1月21~27日)の映画の興行収入は67億5800万元(約1311億1804万円)、観客動員数は1億2900万人にのぼった。それぞれ前年に比べ11.9%、13.2%増で、春節シーズンの興行としては史上2番目の好成績となった。

 今年の春節映画は国産の好作品が揃った。中でも、南宋時代の陰謀劇を描いた張芸謀(チャン・イーモウ、Zhang Yimou)監督の『満江紅(英題:Full River Red)』、中国SF作品として異例の大ヒットとなった『流浪地球(英題:The Wandering Earth)』の続編『流浪地球2(英題:The Wandering Earth 2)』が人気のトップ2。いずれも20億元(約388億円)以上売り上げた。また家族連れに根強い人気のアニメ映画『熊出没(英題:Boonie Bears)』シリーズの最新作も7億元(約135億8133万円)以上売り上げ、このシーズンのアニメ映画としては過去最高のヒットになったという。

「今年の映画は本当に良かったです。息子は『流浪地球2』を見た後、科学の話を理解しようと、家に帰ってから自分で資料を調べていました」

 この女性は、春節休暇中は良い席のチケットが取れなかったので、結局、その後に休みをとって子供を映画に連れて行ったという。幸先のいいスタートを切った中国映画の今後にも期待が高まる。

 映画市場が回復しつつあるのはありがたいことだが、困った問題も生じている。海賊版だ。ネット上のあるプラットホームでは、早くも『満江紅』や『流浪地球2』を含む春節映画5作品が合わせて15元(約291円)余りで売られていた。1本5元(約97円)、5本で15.9元(約308円)という業者もある。中にはタダで見られるものもあり、こうした業者はアクセス数を稼いで広告収入や物品販売で利益を得ようともくろんでいると考えられる。

 こうした海賊版には、人影が映り込んでいたり、話し声が入っていたりすることがある。映画館で上映された作品をスマホや小型カメラで隠し撮りしたものだろう。過去には映画館の職員が、映画館の監視カメラで撮影した上映作品を横流ししたケースや、映画館の経営者が関わっていたケースもあった。

 もちろんこうした行為は犯罪だ。しかも厳密に言えば、海賊版を見る側も著作権の侵害に加担していることになる。海賊版で稼ごうとする輩は言うまでもないが、海賊版を好んで見る人たちがいることも大きな問題だ。映画の製作には相応のコストがかかる。春節映画のような大作ともなればコストは膨大だ。海賊版の売買は、そのコストを支払わずにタダ乗りしようとする行為であることを改めて思い出す必要がある。

 ある専門家は、「海賊版は著作権侵害だけの問題ではなく、市場の秩序にも大きな影響を与える」と指摘する。この専門家は、海賊版の問題が長期的に続けば、「容易に『悪貨は良貨を駆逐する』という逆の淘汰(とうた)がおきて、中国の映画産業の品質に影響を与える」と警鐘を鳴らす。これからもより良い映画を楽しめるよう、海賊版の撲滅に向け一人一人が意識を変えていかなくてはならない。(c)東方新報/AFPBB News