【1月26日 東方新報】中国では古くから小鳥を飼う文化が広く根付いている。今も「遛鳥(Liuniao)」と呼ばれる「鳥の散歩」の習慣があり、飼い主が鳥かごを持って愛鳥に外の世界を楽しませている。公園や路地裏で飼い主同士が集まり、鳥かごを並べてつるしている光景もよく見かける。そして愛鳥の住みかである鳥かごも、美しい彫刻が施されたものなど多種多様にあり、中国各地で職人たちが匠(たくみ)の技を駆使している。

 中国東部の山東省(Shandong)巨野県(Juye)に暮らす85歳の侯学文(Hou Xuewen)さんは、この道50年以上の鳥かご職人。芸術的な鳥かご制作で知られている。「鳥かごは小さくてシンプルに見えますが、大小100種以上の部品で作られています。繊細な作りと芸術性、耐久性にこだわっており、機械では作れません」

 侯さんの制作の様子はインターネットで生中継されることもあり、インフルエンサーとしても人気に。侯さんの鳥かごは芸術品としても取引されている。「鳥かご作り以外に趣味はありません。一生、鳥かごを作ることができて幸せですね」。侯さんは丁寧に作業を進めながら、笑顔を浮かべた。

 新しい世代も育っている。河北省(Hebei)三河市(Sanhe)の喬梁正(Qiao Liangzheng)さんは30代の鳥かご職人だ。三河市では約100年前から鳥かご作りの文化があり、喬さんは祖父や父親が鳥かごを作る姿を見て育った。「私の鳥かご作りには265の工程があります。0.1ミリの誤差もないよう、精確な技術が必要です」。そう話す喬さんは、材料の竹選びが重要と強調する。「空気の湿度が高く、竹が熟成して弾力性のある夏の時期に選びます。表面に大きな節や斑点のある竹を除いて3000本を厳選し、そこから最終的に使うのは1000本ほど。三河市で作る鳥かごは年間わずか500丁程度です」

 喬さんの工房には黒檀(こくたん)やラクダの骨などで作った鳥かごもある。「技術や伝統を受け継ぐだけでなく、革新も必要です」と喬さん。先人の歴史を吸収しながら、未来へまなざしを向けている。

 レジェンド職人の一品もの以外にも、多くの愛鳥家のための「鳥かごの里」もある。中国南部の広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)柳州市(Liuzhou)では中国の鳥かごの80%近くが作られている。1日に300丁の鳥かごが作られ、年間売上額は8000万元(約15兆3469億円)に達する。農村の女性や高齢者らが従事し、生活改善にもつながっている。

 中国西部の四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)古城村(Guchengcun)は近年、「中国鳥かごの里」としてPR。「古城鳥かご文化博物館」を中心に、まちおこしに力を入れている。古城村の高敏(Gao Min)書記は「博物館は鳥かご製品の売買、職人同士の交流、文化伝承の拠点となっています」と話す。小鳥を愛(め)でる文化に、鳥かごは今後とも欠かせない存在であり続ける。(c)東方新報/AFPBB News