【1月12日 東方新報】中国は1月22日に春節(旧正月、Lunar New year)を迎える。毎年、春節を前に論議されるのが、爆竹を禁ずるべきか否かの問題。中国には新年を爆竹や打ち上げ花火で盛大に祝う風習があるが、近年はそれが禁止される傾向にある。ただ、コロナ対策の移動制限が3年ぶりに無くなった今回の春節は、新年の雰囲気を盛り上げようと爆竹の復活を求める声も強い。

 浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)の政策提言機関・政治協商会議で屠嫩斐(Tu Nenfei)氏は、新年の雰囲気と安全や環境保護のバランスを考えた上で、同市の爆竹「禁止」を「制限」に変更するよう提案した。

 山東省(Shandong)の東営市(Dongying)は、年末年始の爆竹や花火の使用を大みそかと春節を含め7日間に「制限」する。同市は昨年に関係規定を「制限」すると改定して今年も継続する模様で、むしろ全国の爆竹擁護派から羨望(せんぼう)のまなざしを受けている。

 そもそも春節の爆竹や花火が禁止されたのは、大気汚染と火事やけがなど事故の多発が理由だ。それゆえに、コロナ禍が収まり切らない現状で呼吸器官に悪影響を与える汚染物質をまきちらし、医療資源が逼迫(ひっぱく)する中で余計なケガ人を増やしうる爆竹を許可すべきではないという慎重論も少なくない。

 環境問題の専門家である李雲(Li Yun)氏は、爆竹の制限策による一定の効果を認めながらも「爆竹や花火の使用を制限したとしても、引き起こす大気汚染は無視できない。全面禁止すれば大気の改善はさらに効果的で、特にPM2.5など主要な汚染物質の抑制は明らかだ」と強調する。

 爆竹擁護派からは、春節の花火や爆竹がどれほど大気汚染の原因になっているかの疑問の声が上がるが、李雲氏は次のように指摘する。

「現代社会において、禁止令を取り去ってしまったら花火や爆竹の生産・消費量は過去とは比べものにならない。その上、現代の都市建設は空気の流動環境を変えてしまっており、祝日の短期間で集中的に花火や爆竹が燃やされれば、環境の自浄能力を超え、人々の健康や生態環境に無視できない影響をもたらす」

 爆竹擁護派の根強い主張は、伝統文化の保護と継承だ。ある論客は「爆竹や花火は1000年にわたる風習で、全国民が共有する数少ない民俗習慣。新年の雰囲気を取り戻すことは、自国の文化への自信を体現することに他ならない。国が発展していく過程で、独自の特色と態度を保つべきで、最も重視する祝日には特色ある表現をすべき」と主張する。

 これに対し、李雲氏は尊重すべきは伝統文化の本質的な精神で、外面的な形式ではないと反論する。「電子爆竹や祝賀音楽などの安全かつエコな方法で祝日を過ごし、中華民族はむしろそのことに自信をもてば良い」

 全国的には爆竹禁止の流れが続くが、一切合切を禁じてしまうのではなく、各地の事情に合わせた適切に対応すべきだという意見が出ているのは、長く続いた厳格なコロナ規制が、市民の強い反発を招いた経験からのようにも思える。(c)東方新報/AFPBB News