【1月13日 東方新報】ゼロコロナ政策が緩和された中国では、癒やしを求めて大自然を満喫するニッチな旅行がトレンドになりつつある。

 旅行情報メディア「馬蜂窩(Mafengwo)」のまとめによると、2023年元旦に人気だった国内ツアー目的地には、中国の「桃源郷」として知られる雲南省(Yunnan)シャングリラ市(Shangri-La)やビーチリゾートが集まる海南省(Hainan)、さらには北朝鮮やロシアに近く異国情緒漂う吉林省(Jilin)や黒竜江省(Heilongjiang)の国境の町が並んだ。「人が少なく景色が美しいニッチな場所がトレンド」と馬蜂窩は分析する。

 ニッチだけでなく健康志向もキーワードのようだ。陶磁器の原材料となるカオリナイト(高陵石)の産地として知られる江西省(Jiangxi)高陵(Gaoling)地区の温泉リゾートでは、ミルク湯やヨモギ湯、ラベンダー湯、バラ湯などバラエティーに富んだ温泉のほか、イチゴ狩りも人気という。

 こうした傾向はコロナ前とは対照的だ。コロナ前は連休ともなると、観光スポットに観光客が殺到し、入場制限が必要になるケースが相次いだ。コロナで長い自粛生活を送った後だからこそ、「おいしい空気でリフレッシュしたい」「美しい景色でいやされたい」「混雑だけは避けたい」というのが旅行客の本音のようだ。

「癒やし」や「ニッチ」などの国内ツアーのトレンドは海外旅行にも当てはまるのだろうか。中国政府は1月8日に入国者に義務付けてきた隔離措置を撤廃し、中国国民向けのパスポート発給手続きを再開した。中国の旅行シーズンである春節(旧正月、Lunar New Year=2023年は1月22日)も近い。中国発の海外ツアー客は一体どこに向かうのだろうか。

 中国メディアによると、春節シーズンである1月8日から2月15日に出発する国際航空券の平均購入額は3481元(約6万7763円)で、人気の目的地はタイ、マカオ、中国、韓国、米国、シンガポールだった。

 中国旅行業界のBtoB見本市「ITB China」で2022年12月に行われた調査によると、中国の旅行代理店の76%が、コロナ禍から回復した後に企画する海外旅行先として東南アジア諸国をトップに位置づけている。

 一方、受け入れる東南アジア諸国も中国人観光客の増加を見込む。

 タイ政府観光庁はこのほど、タイを訪れる中国人観光客が2022年の27万人から2023年には500万人に達するとの予測を発表した。

 マレーシアも2023年に150~200万人の中国人観光客が訪れると予想する。シンガポールは、中国人観光客が戻ってくることで年間20億シンガポールドル(約1979億円)の経済効果が見込めると試算する。

 中国に近い東南アジアの多くの国では、比較的緩やかな入国管理を行っていることも要因だ。一方、欧州連合(EU)、英国、インド、日本、米国などでは、中国滞在歴のある旅行者の入国に対して、さまざまな検査を義務づけている。

 シンガポールのCIMBエコノミストのソン・センウン氏は「中国人旅行客は検査などが義務づけられていない『最も面倒がない目的地』を選んでいる。この傾向は東南アジア経済にとってプラスになるだろう」と指摘する。

 中国人旅行客の入国手続きは国よってバラバラ。その手続きもめまぐるしく変わっている。「癒やし」や「ニッチ」に加えて、出入国の際に「面倒がない」もポストコロナ時代の旅行トレンドになりそうな勢いだ。(c)東方新報/AFPBB News