【1月10日 東方新報】中国では旧暦の正月である春節(旧正月、Lunar New Year)をもって新しい年を迎える。今年の春節は1月22日。それに合わせて中国郵政集団(China Post Group)は毎年恒例の干支(えと)の記念切手を発表したが、「キモい」「妖気を感じる」という不評の声が上がっている。

 卯(う)年を祝う記念切手は2枚セット。このうち1枚は、3匹のウサギが輪になって走る「三兎共耳」という古くから見られるデザイン。問題はもう1枚の方で、全身真っ青のウサギが5本の指で右手に筆を執り、左手で手紙を持っている。目つきは鋭く、歯が突き出してヒゲは針金のよう。インターネット上では「これはウサギじゃなくてネズミ」「青ざめた姿と不気味な笑顔が悪魔みたい」という困惑や批判が噴出している。

 切手セットを描いたのは、98歳の著名な芸術家・黄永玉(Huang Yongyu)さん。中国の干支記念切手は1980年から始まり、黄さんは最初の年である申(さる)年の切手をデザインしている。この切手は今も人気で、1万5000元(約29万円)ほどで取引されている。

 干支切手においてレジェンド的存在の黄さんの作品だけに、ウサギの切手に対し一部の市民や芸術家は「個性的なアート作品」と評価しているが、「記念切手に個性的すぎるアートはいらない」という反発の声は多い。ある切手コレクターは「切手は多くの人が利用する公共物。抵抗感のあるデザインを取り入れる必要はない」と指摘している。

 ネット上では、特別行政区の香港や海外で発行された卯年の記念切手と比較する意見も多い。香港の切手はウサギの置物とバックに花を添え、中国の伝統文化を反映したように見えるイラストだ。韓国はニンジンを持ったアニメ風のウサギ、日本も新年を祝したウサギの絵柄、台湾は切り絵風のウサギの切手を発行している。

 1980年に始まった干支の記念切手はその後も毎年発行され、現在は4回り目に入っている。中国郵政集団の康寧曽(Kang Ningzeng)副総裁は「干支切手は中国の切手で最も人気があり、小さな世界に中国の伝統文化を凝縮している。『申年切手の父』である黄先生が創作したデザインに、喜びや幸福を感じてほしい」と話しているが、市民からは「中国の伝統文化が感じられない」と真逆の反応が聞こえてきている。(c)東方新報/AFPBB News