【12月29日 東方新報】新型コロナウイルスの感染が拡大し、解熱剤が不足する中国で、薬局などは1箱ではなく小分けして解熱剤を販売するようになった。世界で初めてコロナ感染が拡大した3年前にマスクや消毒薬が不足した教訓から、中国政府は市民の間に不安が広がらないようにやっきになっている。

 北京市海淀区(Haidian)在住の周(Zhou)さんは年末の深夜、自家用車を走らせていた。高熱を出した夫のために解熱剤を手に入れるためだ。「家にあった薬を飲ませたが、あまり効いていないようだから」と話す。

 地図アプリで近くの薬局を探して訪れたが、すでに解熱剤は売り切れていた。店員は「店の前のQRコードを読み取ってみてください」と告げた。スキャンすると、解熱剤の在庫がある薬局が表示された。

「在庫あり」と表示された薬局に行くと、店員は100錠入りの解熱剤の瓶から20錠を小分けして取り出し、5.5元(約105円)で販売してくれた。薬の説明書は写真に撮って持ち帰ったという。

 中国メディアによると、こうした解熱剤の小分け販売を早い段階で始めたのは、湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)のある薬局だという。この薬局は、ようやく入荷した46箱の解熱剤を全て開封し、市民200人に無料提供した。薬局の主人は「46箱の薬は普通なら46人にしか売れないが、小分けすればもっと多くの困っている人にあげられる」と語ったという。

 市民の間で、解熱剤など必要な薬品を融通し合うアプリも登場した。アプリの掲示板には「家に高熱を出した高齢者がいます。何か薬がほしい」や「解熱剤を持っています」などと投稿されている。こうした助け合いの動きが広がる一方で、解熱剤を買い占めて高値で転売する業者や個人の摘発も相次いでいる。

 中国では、解熱剤不足のほかにも季節要因が懸念されている。春節(旧正月、Lunar New Year=2023年は1月22日)前に大勢の人が移動する帰省シーズンを迎えるからだ。3年前のコロナ初期段階でも同じように春節の帰省ラッシュによって感染が全土に拡大したとみられている。

 国家衛生健康委員会の焦亜輝(Jiaoyahui)局長は「元旦と春節が近づくと、人の移動が増えるため、都市の感染症が農村部に広がる可能性がある。薬品の配布を進め、準備しておくことが重要だ」と指摘する。

 中国メディアによると、一部地方都市で解熱剤を無料配布する動きも始まっている。河南省(Henan)周口市(Zhoukou)は1人10錠、吉林省(Jilin)吉林市(Jilin)で1人6錠、海南省(Hainan)海口市(Haikou)では1人4錠までなどと伝えられている。

 春節の帰省ラッシュに乗って広がりそうなウイルス。その拡散スピードに中国政府の対策が追いつけるかどうかの競争が始まっている。(c)東方新報/AFPBB News