【12月19日 東方新報】中国の子ども服メーカー各社は新型コロナウイルスを遮断する「抗ウイルス繊維」の開発を急いでいる。十分な効果があるかどうかの実証実験はこれからだが、特許を申請した企業数社の株式がストップ高になるなど、早くもゴールドラッシュの様相を見せ始めている。

 抗ウイルス繊維に詳しい「上海富城実業」の潘松(Pansong)社長は「抗ウイルス繊維とは、ウイルスの死滅や不活性化を実現する製品です。抗ウイルス繊維でつくられた衣類を着ると、繊維に含まれるウイルスなどの病原体から再感染するリスクを低減することができると期待されるため、衣類の洗濯や消毒回数を減らすことができます」と解説する。

 中国メディアの報道によると、2003年から2020年にかけて、申請された抗ウイルス繊維の特許は10件だったが、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年から2021年は95件に急増した。抗ウイルス繊維は、中国を含めて各国で研究が進められているが、決定的な製品は開発されていない。それだけに効果が完全に証明されれば、一獲千金の先行者利益が得られる技術といわれている。

 長く一人っ子政策が続いた中国では子どもは大切にされている。高級デパートには子ども服ブランドが集まる専用フロアがあるほどだ。ところが、子ども服ブランドはコロナ禍で一転して業績不振に陥った。青色吐息の子ども服業界にとって抗ウイルス繊維の開発は「起死回生」のチャンスと思われているようだ。

 一方、抗ウイルス繊維の子ども服は購入する親心もくすぐる。ちょうど中国のゼロコロナ政策が緩和され、子どもたちが外出する機会が増えてきた。来年の春節(旧正月、Lunar New Year=来年は1月22日)前後には3年ぶりの帰省を計画する家庭も多く、安全な子ども服の需要は高まっている。

 こうした需給のタイミングがぴったりと一致した結果、新技術や製品が完成する前から子ども服メーカーの株価が急騰した模様だ。

 期待先行気味の「抗ウイルス繊維」について、中国の救急病院医師は、「発熱外来で働いているのならともかく、一般の人たちは、抗ウイルス繊維の生地でできた衣服を着る必要はないのではないかと思っている」と話す。また、「発熱外来などで防護服に抗ウイルス繊維を使えば、感染リスクを低減させられるかもしれないが、その場合でも、効果があるという仮説を証明するためには、大規模な臨床試験によるデータが必要になるだろう」と指摘した。

 もっとも学術レベルで効果が証明されていなくても、実際に「抗ウイルス子ども服」として発売すれば、必ず売れるだろうとメーカーや株式市場の参加者は予想している。すでに中国ではポストコロナの商戦が始まっているようだ。(c)東方新報/AFPBB News