【11月25日 東方新報】中国では最近、気兼ねなく生理休暇を取れるようにすべきだとの議論が盛り上がっている。

 中国メディアによると、北京市で働く陳留(Chen Liu)さんは最近、「生理痛がひどいので休ませてほしい」と上司に伝えたところ、その上司は「休暇届を人事部に持って行きなさい。皆勤賞はなくなるよ」と言い放ったという。

 陳さんは「女性に与えられている多くの休暇は絵に描いた餅。生理休暇も多くの女性は取れない。給与、ボーナス、役職に対して上司が裁量権を持っているため、女性は当然の権利であっても休暇を取りにくくなっている」と話す。

 ちなみに日本でも、生理休暇は労働基準法第68条で「どうしても勤務するのが難しい」との申告があった場合には、必ず取得させなければならない。診断書の提出などの手続きは必要なく、口頭で伝えられただけでも速やかに応じる必要がある。それでも生理休暇を気兼ねなく取れる会社は少ないのではないだろうか。

 そんな中、広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)が最近、地方議員の質問に対して「重度の月経困難症と月経血過多に悩む女性労働者は、医療機関または母子保健機関の診断を受け、1~2日間の生理休暇を取得できる」と回答した。ほぼ同じ内容が1993年の中国政府通達にも出ているが、あまり知られていなかったようだ。

 深セン市当局の回答がメディアで報じられると、「非常に心温まる内容。もっと多くの人に知らせるべき」と歓迎する声だけでなく、「雇用における男女差別を悪化させるかもしれない」と懸念する声も同時に上がった。

 どういうことか。従業員が生理休暇を気兼ねなく取れるようにすると、企業は採用時に男性求職者を優先し、女性が差別されるという不安があるのだ。実際、中国では女性は30歳前に結婚し、その後、出産することが多いため、20代後半の女性求職者は「産休警戒」で採用を見送られることが多いといわれる。

 女性への雇用差別を懸念した中国政府は今年2月、「女性の雇用促進」についての通達を出し、採用時に男女差別をしないよう各企業に指示した。

 しかし、中国女子学院(China Woman's University)法学部の劉明輝(Liu Minghui)教授は、「中国の法律にはまだ雇用における男女差別の定義がないため、採用時における男女差別を特定することが難しく、時には人事担当者や求職者ですら差別を起こしているかどうか分からない状態だ」と指摘する。まずは「性差別とは何か」を法律で定義する必要があるというのだ。

 性差別をめぐっては、欧米は多くの企業が履歴書の性別欄をなくすなど採用時の書類選考段階から配慮している。日本でも男女雇用機会均等法の趣旨から採用面接で結婚や出産など女性に限定した質問することはNGだ。

 女性の社会進出が他のアジア諸国に比べて進んでいると言われながら、意外にも法整備が追いついていない中国。冒頭で紹介した陳さんは友人とのグループチャットに「中国の女性は強くならなければならない」と書き込んでいる。(c)東方新報/AFPBB News