■地域に役立たない新線

 新線の駅は町境の外側にあり、運賃も割高だ。さらに、ディレダワ―デウェレ間の停車駅は、旧線は8駅あるが、新線は3駅しかない。

 旧線で40年にわたり運転士を務めるムルゲタ・ケベデさん(70)は「鉄道は小さな町や地域沿いに建設され、人々は駅の周辺に住み着いた」と説明した。「車で行けない場所もある。唯一の移動手段が(古い方の)鉄道なんだ」

「ディレダワ〜デウェレ鉄道」のイスマイル・カヤド氏は、旧線と違って、新線は地域の役に立っていないという。「皆、古い鉄道は恵みだと言う。もう一つの方は、われわれには役立たない」

 この歴史ある鉄道の運用を続けるため、開業時からある整備工場が維持されており、数十人の技術者が働いている。開業初期から使われている機械もあり、部品を修理したり、作ったりしている。

 整備工場では、技術者たちの技能を生かして、病院や工場の機械の修理を請け負っており、列車の運行だけでなく、地域全体にとって重要な存在だ。

 洗剤工場を運営し、重要な部品をこの整備工場に発注している男性は「もしここが存在しなければ、とても高価になるが中国から輸入するか、さもなければアディスアベバに行くしかない」と話した。

 鉄道職員たちは、1世紀にわたり引き継がれてきた技能を途絶えさせるつもりはない。

 運転士のアハメド・アブダラさん(53)は「年長者たちから受け継いだものを、次世代に引き継がなければならない」と話した。「人は老いるが、知識は古くならない」 (c)AFP/Aymeric VINCENOT