【12月12日 AFP】米ツイッター(Twitter)を所有するイーロン・マスク(Elon Musk)氏が11日、米政府の新型コロナウイルス対策を率いてきたアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)首席医療顧問(81)を標的にしたツイートを投稿し、物議を醸している。

 マスク氏は「私の代名詞は、『訴追/ファウチ』だ」と投稿した。こうした書き方は、SNSやメールの署名欄で、自身の性自認を識別するためのジェンダー代名詞を表明する慣行を連想させる。新型コロナ対策に関してファウチ氏の責任を追及しようとする保守派のキャンペーンにも沿ったものだ。

 マスク氏はまた、ファウチ氏がジョー・バイデン(Joe Biden)大統領に「王様、もう一回ロックダウン(都市封鎖)を」とささやく様子を描いたミーム画像も投稿した。マスク氏は以前からロックダウンを繰り返し非難してきた。米国では1年以上前からロックダウンは実施されていない。

 流行初期にマスク氏は、新型コロナに対する懸念は「ばかげている」とツイート。ツイッター買収後は、新型コロナ感染症(COVID‑19)に関する偽情報の共有を禁止するポリシーを削除した。

「訴追/ファウチ」のツイートは投稿から11時間で80万の「いいね」を獲得したが、批判も殺到した。

 米ワクチン専門家ピーター・ホッテズ(Peter Hotez)医学博士は、「こうした反科学的な表現手法と偽情報のせいで20万人もの米国人がCOVIDにより亡くなった」とし、投稿を削除するよう求めた。

 民主党のエイミー・クロブシャー(Amy Klobuchar)上院議員は、ファウチ氏の「冷静な危機対応」を高く評価するとともに、マスク氏の「注目を浴びたいという果てしない欲求」を批判した。

 保守派からは、マスク氏を称賛する声も上がっている。COVID‑19の偽情報をめぐってツイッターのアカウントを凍結された共和党のマージョリー・テイラー・グリーン(Marjorie Taylor Greene)下院議員は、マスク氏による買収後の「恩赦」で復活したアカウントに「イーロン、私はあなたの代名詞を肯定する」と投稿した。

 下院で多数派を奪還した共和党の議員は、来年1月からの新議会でファウチ氏を証人喚問すると公約している。

 ファウチ氏は今月末で、政府の首席医療顧問と、1984年から務めてきた国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長を退任する。先月には、インターネット上に誤った健康情報がまん延している問題を指摘し、新型コロナ対応を指揮する上で最も困難だったのは政治的な対立に基づく国民の二極化だと語っていた。(c)AFP