【12月12日 AFP】270人が死亡した1988年のパンアメリカン航空(パンナム、Pan Am)機爆破事件で、米当局は、使用された爆発物を製造したとして訴追していたリビアの元情報機関員の男を拘束した。米英当局が11日、明らかにした。

 英スコットランド当局と米司法省によると、拘束されたのは「アブアジラ・ムハンマド・マスード(Abu Agila Mohammad Masud)」ことアブアジェラ・マスード・ヘイル・マリミ(Abu Agela Mas'ud Kheir Al-Marimi)容疑者。米当局は身柄を確保した経緯については公表していないが、今後、首都ワシントンの連邦裁判所で審理が始まるとしている。

 米司法省は2020年、同容疑者をパンナム機爆破に関与した容疑で訴追。同容疑者は1986年に独ベルリンのナイトクラブで起きた襲撃事件に関与した容疑でリビア当局の拘束下にあり、身柄の引き渡しが焦点となっていた。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、連邦捜査局(FBI)がマスード容疑者を逮捕し、米国に移送中だと報じていた。

 1988年12月21日、ロンドンからニューヨークへ向かっていたパンナム103便は、離陸から38分後にスコットランドのロッカビー(Lockerbie)上空で爆破された。米国人190人を含む乗客乗員259人に加え、落下した機体の残骸によって地上にいた11人が死亡した。

 英国内で最大の犠牲者を出したこのテロ攻撃では、2001年にリビアの情報機関員1人が有罪判決を受けて収監されたが、無罪を主張したまま2012年に病死。マスード容疑者の裁判を通じて真相解明につながるかが焦点となる。

 マスード容疑者は、リビアの故ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の「爆弾職人」だったとされ、米司法省は、パンナム機に仕掛けられた爆弾の組み立てとプログラミングを担当したとみている。

 2011年にカダフィ大佐が失脚・死亡し、翌年リビアで逮捕されたマスード容疑者がパンナム機爆破への関与を認める供述をしたことを知った米当局は、2016年、捜査を再開していた。(c)AFP