【12月7日 東方新報】北京市の副都心である通州区(Tongzhou)の緑化プロジェクトが急ピッチで進められている。100以上の緑化プランを定めた2019~22年の3か年計画が政府の「国家森林城市」に選ばれており、各地から視察が相次ぐ。首都の副都心が緑化に力を入れる背景には、習近平(Xi Jinping)国家主席自ら旗を振る温室効果ガス削減の「3060計画」の存在があるようだ。

 3060計画とは、現在世界の3割弱を占める中国の温室効果ガス排出量を2030年までにピークアウトさせ、2060年までに実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す遠大な計画だ。習主席が2020年9月の国連総会で発表した。

 最近、中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)常務委員会による環境保護キャンペーン「習近平氏の生態文明思想の実践 法支配の力で生態環境を守る」が北京で開催された。

 そのキャンペーンの一貫として、参加者が訪れたのは通州区の大型公園「城市緑心森林公園」だった。この公園は2020年9月29日に公開され、最終的には東京ドーム240個分の約11.2平方キロに拡大される予定だ。そのうち緑化される面積は約7.39平方キロメートルにも及ぶ。

 公園には、二十四節気にちなんだ観光スポット36か所や、昔の運河や工場跡地を含む観光スポット12か所が整備されている。

 北京市によると、この公園からは3300トンの炭素を排出する一方、公園内の森林などで年間6200トンの炭素を吸収するため、差し引きで「カーボンマイナス」になる公園だ。

 視察ツアーの参加者たちに紹介されたのはこうしたカーボンマイナスの成果だけではない。この公園の敷地が緑化される前は「東方化工」など大型工場が数多く入る工業団地だった。重度に汚染された工業団地跡地には現在、100万本近くの草木が育ち、日々、温暖化ガスを吸収している。

 通州区の秦涛(Qin Tao)副区長は、「将来的には、国家自主排出削減取引センターや国際的な環境投資グループの成立し、緑化を発展につなげていきたい」と話す。温室効果ガス削減は21世紀の成長ビジネスといわれる。何かとコストのかかる緑化プロジェクトを排出権取引所の設置など環境ビジネスにつなげて永続化させていく方針だ。

 これまで中国は自らを地球温暖化に責任のない途上国だとして、温暖化ガスの削減責任につながる明確な将来目標を掲げることには消極的だった。その意味でもカーボンニュートラルへの具体的な期限を切った「3060計画」は画期的だ。首都北京の副都心で進む緑化が成功するかどうかは、地球全体の温暖化対策の試金石となる。(c)東方新報/AFPBB News