【11月15日 AFP】ロシア軍がウクライナ東部クピャンスク(Kupiansk)から撤退した際、市職員のオレナさんが庁舎のがれきの中から回収したのは椅子1脚とモニター1台だけだった。他にはほぼ何も残っていなかったことから、組織的な略奪を疑う見方が強まっている。

 クピャンスクはロシアとの国境から50キロに位置する鉄道の要衝で、侵攻前の人口は2万7000人だった。開戦から3日後の2月27日、ヘンナジー・マツェホラ(Genadiy Matsehora)市長は戦闘行為の停止と引き換えに、ロシア軍に街を明け渡すことに同意。以後、同市は9月10日までロシア軍の占領下に置かれていた。

 親ロシア派政党「野党プラットフォーム―生活党」の党員であるマツェホラ市長は、ウクライナ政府から反逆行為に及んだとの非難を受け、ロシアに逃亡した。

 ロシアによる侵攻が始まって以来、初めて職場に戻ってきたオレナさん。「復職希望者は、ウクライナ国旗を踏み付け、『ありがとうロシア、私たちの解放者!』と叫ばなければならなかった。しかもその様子を動画に収められていた」と明かした。

 オレナさんは3月に5日間、ロシア軍に拘束された。その後も家に閉じこもり、9月に戦闘が激化した際には地下室に避難した。市が解放されて初めて地下室から出てみると、家の中はひどい荒れようだった。

「電子レンジや洗濯機が盗まれた。もう一つ、説明のつかない物がなくなった。トイレの水タンクだ。トイレそのものではなく、水タンクだけが奪われた」と、オレナさんは首をかしげた。