【11月2日 AFP】韓国ソウルの繁華街・梨泰院(Itaewon)で先月29日に起き156人の死者を出した雑踏事故について、当局は群衆整理に不備があったことを認めている。公式資料や報道、目撃者の証言から、事故の経緯を時系列で検証する。

■事故直前

 29日午後、梨泰院の狭い路地にハロウィーンの仮装をした数万人の人々が集まり始める。

 事故現場となった路地は午後8時半までに満員になり、群衆の密集により負傷する人も出始めていた。

 あるナイトクラブ従業員は地元メディアに、事故が起こる前に2度にわたり警察に通報したが「誰も来なかった」と語った。

■緊急通報

 目撃者によると、午後10時、ハミルトン・ホテル(Hamilton Hotel)横の坂道の上部にいた人々が倒れ始めた。

 坂の下の人々は、地下鉄梨泰院駅1・2番出口やハミルトン・ホテル正面玄関などの反対方向からの人波により、その場を離れられなくなっていた。

 人々は「ドミノのように」倒れ、身動きを封じられた前方の人々は踏みつけられ、押しつぶされた。

 午後10時15分~22分、事故に関する複数の通報が地元消防署にあり、同15分~27分の間に緊急対応要員が派遣された。

 現場の人々からは、息ができないとの通報が相次いだ。救助要請が80件を超えていた午後10時43分、当局は緊急対応の第1段階を発令した。

 現場に到着した救急隊員は路上で負傷者の心肺蘇生を開始したが、すぐに手いっぱいになり、市民にも協力を求めた。

 緊急対応は午後11時13分に第2段階、午後11時50分には第3段階に格上げされた。

 現場では、救急隊員や通行人が、路地に折り重なった人々を救出しようと奮闘。全員が収容されたころには、時刻は午前0時を大きく回っていた。

■梨泰院への立ち入り禁止

 警察は人々を現場から遠ざけようとしたが、密集度があまりに高く、簡単には解散させられなかった。

 午前1時、警察は周辺の店に営業停止を命じた。

 この時点で、救急隊員は現場から数十人を救出し、通行人の助けを借りながら必死に蘇生を試みていた。近くでは、事故に気付いていない様子の人々がハロウィーンを祝い続けていた。

 午前2時ごろ、尹錫悦(ユン・ソンニョル、Yoon Suk-yeol)大統領は、当局者と医療関係者以外の梨泰院への立ち入りを禁止した。

■増え続ける死者数

 午前3時ごろ、消防当局は120人が死亡したと発表。救助された人の多くが重体のため、死者はさらに増える見通しだとした。

 地下鉄の梨泰院駅は、帰宅する人々で一気に混雑した。ソウル市は午前3時50分、帰宅支援のため臨時バスを運行させた。

 午前4時、消防当局は146人が死亡、150人が負傷したと発表。

 周辺には、まだ帰宅できない人々が残っていた。市当局は午前5時、梨泰院駅に追加の地下鉄車両を送った。

 1日時点の死者数は156人で、その多くは若い女性だった。さらに多数が負傷し、今も重体が続く人もいる。(c)AFP/Taejun KANG