【10月31日 東方新報】中国ではここ数年で「懶人経済(怠け者経済)」という言葉が定着した。食事はデリバリー、買い物はネットで購入する、映画館に行かずにパソコンで映画を鑑賞する、お手軽な家電製品を買って家事をしない-といった具合だ。

 ネット通販とスマホ決済が急激に普及したことが背景にあり、コロナ禍でステイホームを余儀なくされたことで懶人経済は加速している。都会のリッチな若者は「送料や手数料を払っても楽な生活をしたい」という意識が強く、いまどきの若者のライフスタイルを象徴した言葉として使われている。

 そんなお気楽ライフを支える家電製品は「懶人神器」と呼ばれており、最近は靴専用の洗濯機が新たな「神器」として人気を集めている。今年1~8月のオンライン取引で靴洗濯機は30万台を突破。さらに国慶節(建国記念日)連休(10月1~7日)の最初の3日間、靴洗濯機の売り上げは昨年同期の7倍に増加した。

 中国では2018年4月、広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)の貿易フェアで、家電大手の海爾(ハイアール、Haier)が「世界初」として家庭用靴洗濯機を発表。水流スプレー技術により靴を高圧洗浄し、靴の繊維の奥まで汚れを取り除くとPRした。今ではブラシ型、洗濯・乾燥一体型、折り畳み式、超音波洗濯機などさまざまなタイプの機種が登場。ハイアールや美的集団(Midea)、奥克斯(AUX)といった中国家電メーカーや日本のパナソニック(Panasonic)など300社以上が参入している。統計によると、靴洗濯機の価格は500元(約1万111円)未満が50.5%、500~1000元(約1万111~2万233円)が26.6%で、1000元以上の高価格帯商品もある。

 ネット上では「靴洗濯機は両手を解放する」とも宣伝されているが、実際のユーザーからは「手洗いほど汚れが落ちない」「使い勝手が悪い」という声も。中国では新語として「智商税(IQ税=無知の代価、お勉強代)」という言葉も浸透している。靴洗濯機の人気ぶりに対し、ものぐさに「懶人経済」をしようとして無駄な金を使い、「智商税」を払っているだけという冷ややかな見方も広まっている。(c)東方新報/AFPBB News