【11月2日 AFP】米西部アリゾナ州のとある都市郊外の駐車場で、非公式の「投票監視員」が目を光らせていた。武器も携えている。中間選挙で民主党の票が水増しされ、共和党の勝利が阻まれる事態を防ぎたいとの思いから、見張り役を買って出たのだった。

 期日前投票の回収箱の近くにいたのは、年金生活者のガボール・ゾルナさん(78)。装着しているカメラを指さし、「抑止のためさ」とAFPに語った。ダウンジャケットからは、ホルスターに収まった銃がのぞいている。

 52歳の退職者ニコールさん、それに自治体職員のリネットさんを加えた3人は皆、2020年の大統領選では、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領の勝利が「盗まれた」と信じている。共和党員として登録している米国人の約70%が同じ考えであることが、複数の世論調査で明らかになっている。

 アリゾナ州は数十年にわたって共和党の牙城だったが、前回の大統領選では票が割れた。結局、わずか1万票差でジョー・バイデン(Joe Biden)氏が勝利。以来、さまざまな陰謀論が拡散していった。

 同州では、共和党上層部に陰謀論は受け入れられた。州知事選から連邦議会上院選、州務長官選まで、中間選挙の同党候補はこぞって、大統領選で不正が行われたという根拠のない説を熱心に唱えている。

 実際には、共和党側が委託した企業による「監査」を含め、複数の調査で、大きな不正はなかったことが判明している。

 AFPが出会った3人の自称「監視員」にとってはしかし、そんなことはさして重要ではない。不正があったと言い張るゾルナさんは、人類の月面着陸は捏造(ねつぞう)だと主張する。リネットさんは、地球は平らだと信じているのだ。