【10月29日 AFP】ウクライナ中部にある工業都市クリビーリフ(Kryvyi Rig)。冷戦の最中の1960年代に造られた地下の核シェルターで、子どもたちの格闘技大会が行われていた。

 ここ1か月のウクライナ軍の反撃により、ロシア軍は町外れから車で約1時間の位置まで後退している。

 同市では子どもに少しでも普段通りの生活をさせようと、数ある地下壕(ごう)をイベント会場として使用している。週末に催しがあると何百人という市民が集まる。

 この日、恒例の近接格闘術大会で決勝戦に臨む少年少女は、白い道着姿で誇らしげに入場した。

 マットの上で試合をする子どもたちとは対照的に、壁に寄りかかり、あるいはベンチに座ってそれを見守る親たちの顔には疲労の色が見える。だが、興奮気味に試合開始を告げる司会者の声は、拡声器を通じて地上にまで響いていた。

 大会を監修したウクライナ代表チームのアナトリー・ウォロシン(Anatoliy Voloshyn)コーチは、「大人は子どものことを忘れていないというのを示すことが、子どもたちにとって心理的に重要です」とAFPに語った。

「もう何か月も学校に行ってないのです。自分たちは今も大切にされているんだと感じさせなければ」

■「気を抜くな」

 クリビーリフ最大の地下壕では、ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領がキャリアをスタートさせたテレビスタジオ関係者によるコメディーショーからポップコンサートまで、あらゆるものが開催されている。

 国内の他の工業都市同様、紛争が長引く中、人々は高揚と絶望の微妙なバランスの間で生活している。

 ミサイルや自爆型ドローン(無人機)の接近を知らせるサイレンは昼夜を問わず鳴り響き、ミサイルが撃墜されるたびにソーシャルメディアはそのニュースに湧く。

 他方、攻撃の被害を受けていない地区では、空襲警報を無視して散歩や買い物を続ける人々もいる。

 同市のセルヒー・ミリューチン(Sergiy Miliutin)副市長は、どうすれば人々が紛争開始当初のようにサイレンを真剣に聞くようになるのか、もはや分からないと嘆く。「私たちは常に、どうか、どうか、どうか、気を緩めないでと伝え続けています」と語った。(c)AFP/Dmitry ZAKS