【10月27日 AFP】インドのヒンディー語映画界「ボリウッド(Bollywood)」が、最大の危機に直面している。映画の人気が高いインドにあっても娯楽の雄の座を維持してきたが、動画配信サービスや非ヒンディー語作品にその座を奪われつつある。

 人口14億人を擁するインドでは、世界最多を誇る毎年平均約1600本の映画が制作される。

 しかし今、映画館は静まり返っている。ボリウッドの中心地、西部ムンバイ(旧ボンベイ)でさえ、新型コロナウイルス感染対策の行動制限が解除されても興行収入は落ち込む一方だ。

 ムンバイで長年にわたり映画館を経営しているマノージ・デサイさんは「これまでで最大の危機だ」とAFPに語った。「観客がいない」ため上映が中止されたこともあったという。

 通常ならヒット間違いなしの大スター、アクシャイ・クマール(Akshay Kumar)さんが出演する作品でさえ、今年は3作品連続で興行業績は振るわなかった。

 同じく大スター、アーミル・カーン(Aamir Khan)さんの『ラール・シン・チャッダ(Laal Singh Chaddha)』は、トム・ハンクス(Tom Hanks)さんが主演を務めた1994年のハリウッド(Hollywood)映画『フォレスト・ガンプ/一期一会(Forrest Gump)』のリメークだが、こちらも観客を集めることはできなかった。

 投資銀行エララ・キャピタル(Elara Capital)のメディアアナリスト、カラン・タウラニ(Karan Taurani)氏によると、2021年に公開されたボリウッド作品50本余りのうち、興行収入目標を達成したか、もしくは上回ったのは5分の1にとどまった。コロナ禍以前はその割合は50%に達していた。

 対照的に、「トリウッド(Tollywood)」と呼ばれる、南部テルグ語映画界の複数の作品がトップ層に躍り出た。

 インドステイト銀行(State Bank of India)の首席経済顧問、ソーミャ・カンティ・ゴーシュ(Soumya Kanti Ghosh)氏の最新報告によると、21年1月から今年8月までに公開されたヒンディー語映画の興行収入の約半分は、南インド映画の吹き替え作品によって稼ぎ出された。