【10月30日 AFP】フランス・ロワール(Loire)川のほとりに立つ12世紀の城を所有するグザビエ・ルルベさんは、今冬の暖房代が一体幾らになるのだろうかと恐れている。

 フランスでは、ロシアのウクライナ侵攻の影響で天然ガス価格が高騰。昨年に比べ光熱費も大幅に上がると予想されている。

 特にロワール川沿いに点在する歴史的建造物の所有者や管理者にとって、これが頭痛の種となっている。

 ルルベさんは毎冬、ムンシュルロワール(Meung-sur-Loire)城の暖房、電気、ガス代に1万5000~2万ユーロ(約220万~300万円)を支払う。だが、今年は5倍から10倍になる見通しだ。「とてもではないがそんな額の光熱費は支払えない」

 窓などの修繕費の予算を回すしかないと話す。

「窓一つで1万ユーロ(約150万円)する。城内には窓が148個ある」

 ルルベさんの城から車で1時間ほど下流に行ったところには、シュベルニー(Cheverny)城がある。

 城のウェブサイトによると、漫画「タンタンの冒険(The Adventures of Tintin)」シリーズに出て来るハドック船長(Captain Haddock)が住む城のモデルで、600年間同じ一族が所有してきた。

 城の一部には今も数人暮らしているが、他の区域や敷地には有料で見物客を受け入れている。

 シュベルニーはロワール川沿いで最も人気がある城の一つだ。城を所有するシャルルアントワーヌ・デビブレー(Charles-Antoine de Vibraye)さんによると、毎年3万~4万リットルの灯油を使う。ただ、見物客の受け入れで十分なもうけがあるため、灯油代が値上げされた分を賄うことができるという。

 熱を閉じ込めるとかびや木を食べる虫が増えてしまう恐れがあり、城の断熱性を改善することも考えてはいない。

 シュベルニー城から少し南に行くと、国有のシャンボール城(Chateau of Chambord)がある。

 急な階段の下にある暖炉では、大きなまきが4本燃えている。見学者用の暖房設備はこれだけだ。

 だがオフィスやギフトショップなど地所内の40軒ほどの家では暖房が使われている。

 城周辺の地所を管理するジャン・ドソンビルさんは「ここ2年で(暖房費は)倍になった。26万ユーロ(約3800万円)だったが2023年の予算では60万ユーロ(約8800万円)以上だ」と話す。

 今冬の暖房費は、企画展二つとフェスティバルの予算を合わせた額とほぼ同じになる。城の管理者はソーラーパネルの設置など、代替エネルギーの導入を真剣に検討し始めたという。

 地所内にある50平方キロの森の中に数か月以内に製材所を設置し、暖房用のまきを用意する計画だ。

 それまでは、新たに導入された照明や室温を管理するITシステムや、LED照明への切り替えで光熱費が削減されることが期待されている。

 ドソンビルさんによると、ITシステムで人がいない部屋の明かりを消したり、夜間の室温を8度に維持したりすることができる。来年までに消費エネルギーを少なくとも10%削減できると見込んでいる。(c)AFP/Maxime MAMET