■抵抗するのは「有害な権利意識」のため

 著名人の中にもいまだに抵抗を示す人はいる。

 今年、俳優のフランク・ランジェラ(Frank Langella、84)は、現場で共演者へのセクハラ発言を繰り返したとされ、ネットフリックス(Netflix)で撮影中だった「The Fall of the House of Usher(アッシャー家の崩壊)」から降板させられた。

 ランジェラは米エンターテインメント情報サイトのデッドライン(Deadline)への寄稿で、ラブシーンで相手役の俳優の脚のどこを触るべきかというインティマシー・コーディネーターの指示を「ばかげている」と一蹴。「直感性や自発性が損なわれる」とこき下ろした。

 だがウォーデン氏は、ランジェラの抵抗は「理解不足」というより、「他人の承諾を考慮しようとしない、有害な権利意識によるものだ」と批判する。

 スタインロック氏は、インティマシー・コーディネーターだけではワインスタイン受刑者が行っていたような性的虐待は解決できないと主張する。実際、同受刑者による虐待は大抵、撮影現場以外で行われていた。

 性的なシーンに対するインティマシー・コーディネーターの役割によって、「合意に基づく会話の進め方や、俳優が自分の体に持つ自己決定権など、さまざまな面に波及効果がもたらされるだろう」とスタインロック氏。

「だが、インティマシー・コーディネーターが業界に導入されるようになっただけで、過去100年にわたってエンターテインメント業界で行われてきたさまざまなハラスメントや権力の乱用が一気に解決されると簡単に考えてはいけない」とくぎを刺した。(c)AFP/Andrew MARSZAL