中国には「大きなうそがある」 検閲システム元開発者の告白
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■ティックトックの運営会社に就職
チェンさんは、同世代の優秀な中国人の例にもれず留学し、エストニアで経営学の学位を取得して帰国。ITの知識を買われ、動画投稿アプリ「ティックトック(TikTok)」や同アプリの中国版「抖音(Douyin)」を運営している中国のIT大手バイトダンス(ByteDance、字節跳動)に職を得た。
「最初はわくわくしました」とチェンさん。「バイトダンスは、国外で事業を成功させている中国唯一の企業ですから」
知的好奇心を刺激される仕事で、月給も北京の平均を大幅に上回る4000ドル(約59万円)だった。
■検閲システムの開発に従事
チェンさんは、バイトダンスが不適切と考えるコンテンツを自動的にフィルターにかけて削除するシステムの開発チームに所属していた。
人工知能(AI)で画像や音声、書き込みをチェックし、規制対象となっている表現を削除する仕組みで、システムで問題が検出されると、大勢いるオペレーターの一人が確認し、問題の動画を削除するかライブ配信を停止するようになっていたとチェンさんは説明した。
対象となるコンテンツの大半は、どのソーシャルメディア企業でも不適切とみなされるような内容で、自傷行為やポルノ、無許可の広告などだったが、中には政治的にデリケートなものもあった。
チェンさんは、常に規制対象となっていたのは、戦車や黄色い傘、ろうそくなど、香港の民主化運動を象徴する画像、あるいは習近平(Xi Jinping)国家主席や中国共産党の指導部を批判する内容だと説明した。
チェンさんによれば、バイトダンスは中国のサイバースペース管理局から指導を受けていたが、あえて明確には示されていない規則を破らないように慎重を期し、自主規制していた。
「中国では、境界線が曖昧なんです。何が政府の怒りを買うかはっきり分からないので、こちらから厳しめに検閲することもあります」とチェンさん。バイトダンスには「石橋をたたいて渡っているようなところがあった」と評した。