【10月16日 AFP】世界中で抗議デモのアンセムとして歌われてきた「ベラ・チャオ(Bella Ciao)」が、イランで服装規定違反を理由に逮捕された女性が死亡したことに抗議する同国の女性たちへの連帯を示す応援歌になっている。

 イランで先月、マフサ・アミニ(Mahsa Amini)さん(22)が「道徳警察」に逮捕され、拘束下で死亡した。このことに抗議するデモが始まってすぐ、女性の髪を隠すスカーフ「ヒジャブ」着用の強制に異議を唱え、髪の毛をあらわにした女性歌手がペルシャ語で「ベラ・チャオ」を歌う動画が拡散。その後、トルコのクルド人女性や仏パリに住むイラン人も連帯してこの歌を歌っている。

「ベラ・チャオ」は第2次世界大戦(World War II)中のイタリアで、ファシストに対する抵抗のシンボルとして歌われるようになった。

 この歌の研究書「Bella Ciao: The Song of Freedom(ベラ・チャオ:自由の歌)」の著者カルロ・ペステッリ(Carlo Pestelli)氏によれば、この歌が戦時中にイタリアで流行したのは確かだが、実際にパルチザン闘士が歌っていた証拠はない。

 19世紀に北イタリアで歌われていた当時は、かなわぬ恋をテーマにした情熱的な歌と見なされていた。だが、「起源は明確には分かりません」とペステッリ氏はAFPに語った。

 だが、歌詞が曖昧なこともあり、さまざまな目的で歌われるようになったと同氏は言う。「自由を求める宣言です。誰もが理解し、共有できる非政治的な価値観を表しています」

「ベラ・チャオ」を繰り返すコーラス部分は歌いやすく、イタリア語話者でなくても口ずさめる。

 ウクライナの人々は今年、侵攻するロシア軍に抵抗してこの歌を歌った。リビアの首都トリポリではデモ隊に使用され、英国ではサッカーファンのアンセムになり、気候変動の活動家は豪シドニーやベルギーのブリュッセルでもこの歌を歌いながら行動を呼び掛けている。

 2020年に新型コロナウイルス対策としてロックダウン(都市封鎖)が導入された際には、伊ローマやパリで住民たちがバルコニーからこの歌で励まし合った。

 今月ローマで行われたイラン抗議デモの連帯集会に参加したイラン人のマサさん(29)は「この歌はイランでもとても有名です。抑圧に対抗する象徴だからです」と語った。

 マサさんの姉シバさん(33)は「これを歌うと、世界中と一つになれる気がします」と話した。(c)AFP