【10月9日 AFP】イランで服装規定などを取り締まる「道徳警察」に逮捕されたマフサ・アミニ(Mahsa Amini)さん(22)が拘束下で死亡したことに端を発した抗議デモは8日、4週目に入った。全土で女子学生がスローガンを叫び、労働者がストをし、デモ隊が治安部隊と激しく衝突している。

 クルド系女性のアミニさんは先月13日、家族と訪れていた首都テヘランで頭髪を覆うスカーフの着用方法をめぐり連行された後、昏睡(こんすい)状態に陥り、3日後に死亡した。イラン当局は今月7日、アミニさんの死因は頭部への殴打ではなく、長年の既往症だとする調査結果を発表した。

 しかし、アミニさんの父親は在英ペルシャ語放送イラン・インターナショナル(Iran International)に対し、「私はマフサの両耳と首の後ろから血が出ているのを自分の目で見た」と述べ、公式発表を否定した。

■抗議の輪

 テヘランの女子大学、アルザフラー大学(Al-Zahra University)では、保守強硬派のエブラヒム・ライシ(Ebrahim Raisi)大統領が新年度の始まりに訪れた際にも、抗議デモが続いていた。

 在外人権団体イラン・ヒューマン・ライツ(Iran Human Rights)は同大のキャンパスで「抑圧者に死を」と叫ぶ若い女性たちが目撃されたと報告している。

 アミニさんの地元の西部クルディスタン(Kurdistan)州サッケズ(Saqqez)では、女子学生が「女性、命、自由」とスローガンを唱えながら、スカーフを振り回して行進する様子が撮影された。人権団体によると8日に行われた抗議デモだという。

■「警察は殺人者」

 抗議参加者はインターネット規制をものともせず、新しいメッセージ戦術を取っている。

 例えばネットには、「もう恐れない。私たちは戦う」と書かれた巨大横断幕がテヘラン市内の陸橋に掲げられた画像が投稿された。AFPは画像が真正であることを確認した。

 また同じ幹線道路にある当局の広報ボードの文言を、「警察は公僕」から「警察は殺人者」に書き換える男性を捉えた映像も拡散している。

 イラン学生通信(ISNA)は、テヘランの特に大学付近で当局の警備が厳重になっていると伝えている。テヘランでは「散発的かつ限定的な集会」が各地で開かれ、「一部のデモ隊が公共物を破壊」したという。

 イラン・ヒューマン・ライツは、一連の抗議デモに対する弾圧で少なくとも95人の参加者が死亡したとの見方を示している。

■外国人拘束も

 そうした中、国営イラン通信(IRNA)によると、女性の髪を隠すスカーフ「ヒジャブ」の着用法をめぐる取り締まりを7月に宣言したライシ大統領は8日夜、司法長官および国会議長と会談した。

 イラン当局は外国勢力が抗議デモを扇動していると繰り返し主張。先週には欧州出身者計9人を逮捕したと発表した。フランスやオランダは、イランへの渡航に関する警告や同国からの出国勧告を発している。

 イランで6年間にわたって拘束され、今年3月に解放された英・イラン二重国籍の慈善活動家、ナザニン・ザガリラトクリフ(Nazanin Zaghari-Ratcliffe)さんは、イラン当局の人権侵害について行動を起こすよう英政府に呼び掛けている。

 ザガリラトクリフさんは英衛星放送スカイニューズ(Sky News)に対し、「イランで起きていることに無関心でいることはできない」「私たちはイランに責任を負わせなければならないと思う」と語った。(c)AFP