【10月9日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は先月、ウクライナ侵攻における核兵器使用に言及し、「はったりではない」と強調した。これを受け西側諸国では、それが現実に起きた場合の対応策について議論が巻き起こっている。

 万一、ロシアが核攻撃を行った場合に想定されるシナリオについて、専門家や政府関係者に話を聞いた。

■ロシアはどんな核兵器を使用するか?

 ロシアはおそらく一つ以上の戦術核兵器、つまり戦場単位で使用する射程の短い核兵器を配備する可能性があると専門家はみている。

 戦術核兵器は威力0.3キロトン~100キロトンの小型核兵器で、全面戦争で勝利するために設計された戦略核兵器に比べ、影響が戦場に限定されるよう設計されている。

 とはいえ「小型」や「限定的」というのはあくまで相対的な表現だ。1945年に米国が広島に投下した原爆は、わずか15キロトンの威力で壊滅的な被害を及ぼした。

■ロシアは何をターゲットにするのか?

 アナリストは、ロシアがウクライナで戦術核兵器を使用するとすれば、その目的は威嚇によってウクライナを降伏させるか交渉に応じさせること、そして同国を支援する西側諸国を分断させることだと分析している。

 ただ、米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・キャンシアン(Mark Cancian)氏は、ロシアが最前線で核兵器を使用することはないだろうとの見方を示す。

 約30キロの領域を制圧するためには小型核兵器20発が必要ともいわれるが、得られる結果に比して、核兵器に手を出すデメリットや放射性落下物のリスクはあまりにも大きい。

 直接攻撃しなくても、水上や上空で核爆弾を爆発させれば、電磁パルスを発生させて電子機器を破壊することができ、大きな犠牲を避けつつ強力なメッセージを送ることができる。

 プーチン氏にはさらに、ウクライナの軍事基地やキーウなど都市部への攻撃や政治指導者の殺害など、破壊と死傷者の規模を拡大する選択肢もある。