【9月27日 東方新報】中国ではここ数年、「益生菌」をうたった商品が次々と登場している。益生菌とは十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物(プロバイオティクス)を指す。商品は食品・飲料・製剤をはじめ、益生菌入りの口腔(こうくう)スプレーやマスク、化粧品など枚挙にいとまがない。「益生菌で腸をスッキリ」「免疫力の低下には益生菌」「アレルギー体質に益生菌」と、すべての病気を治す万能薬かのようにPRされている。

 健康に良い商品というと中高年が買い求めているイメージが浮かぶが、むしろ若者の間で人気が高い。中国では急激な経済成長に伴い、仕事は忙しいが娯楽も満喫し、食生活や睡眠が不規則になる若者が増えている。世代別の健康自己評価ではZ世代の若者は自己評価が低い傾向にあり、ライフスタイルの乱れを益生菌入り食品のような「外部補給」で補おうとしている。

 ただ、中国では「人体に特定の保健機能をもたらす」「ビタミン・ミネラルが補給できる」と認められた食品は「健康食品」と表示できるが、益生菌類食品の多くは健康食品のマークはついていない。あくまで一般の食品だ。このため、「益生菌類商品は気休めにすぎない」「智商税(IQ税=無知の代価、勉強代)を払っているだけ」という冷ややかな声も多い。

 中国国家市場監督管理総局は2019年3月、益生菌類健康食品を定義するため、「益生菌類健康食品申告および審査規定(意見募集稿)」を公布。「賞味期限以内で各菌種の活菌数は1ミリ当たり106CFU(コロニー形成単位)以下にしてはいけない」「菌種の中国語名称および菌株号を表記する」などと規定している。だが、商品の活菌数を検出する当局の検査体制は万全には整っていないのが実情。菌種の表記が不十分な商品も散見されている。

 また、中国の広告法では「健康食品であっても効能や安全性を断言・保証してはならない」としており、益生菌類商品が「○○に効く」と宣伝するのは誇大広告に当たるとも指摘されている。昨年8月末には、ヤクルト(Yakult)のグループ会社・上海ヤクルトが「新型コロナウイルスの予防に効果がある」と誤解を与える広告を出して45万元(約900万円)の罰金を科された。上海ヤクルトは9月に謝罪声明を出している。

 ロンドンを拠点とする市場調査会社ユーロモニターインターナショナル(Euromonitor International)によると、中国は現在、世界第2位のプロバイオティクス市場に成長。中国の平安証券研究所は2022年の益生菌類商品の売り上げは1000億元(約2兆円)に達すると推測している。「益生菌ブーム」が広まる中、当局の検査態勢の拡大や業界の統一基準確立を求める意見も多くなっている。(c)東方新報/AFPBB News