【9月21日 東方新報】中国の若者の間で最近、「髪量(髪のボリューム)」が重大な関心事となっている。ヘアスタイルという意味ではなく、「英年早禿(若ハゲ)」に悩んでいるのだ。

 中国国家衛生健康委員会が2019年に公表したデータによると、中国では国民の6人に1人にあたる2億5000万人が抜け毛に悩んでいる。内訳は男性が1億6300万人、女性も8800万人と少なくない。復旦大学(Fudan University)付属華山病院皮膚科の呉文育(Wu Wenyu)副主任は「薄毛を自覚している人の84%が30歳前に抜け毛が始まったと回答している。一世代前に比べると、抜け毛の始まる年齢が20年早くなっている」と説明する。国家衛生健康委員会の2021年のリポートによると、「95後(1990年代後半生まれ)」「00後(2000年代生まれ)」の33%が薄毛に悩んでいる。

 抜け毛に悩む人の割合は北京市や上海市など大都市が多い。仕事がハードでストレスを抱える一方、暴飲暴食に夜更かし、極端なダイエットをする若者が増えていることが、「抜け毛人口」の急増につながっているとみられる。

 中国では近年、「顔値(外見偏差値)」という言葉が定着した。見た目の良い人は恋愛だけでなく就職や出世、収入などあらゆる面で有利になっているという考え。このため、若者にとって抜け毛に悩むのは「気持ちの問題」ではなく、人生全体に影響を及ぼす死活問題となる。

 こうした流れを受け、「毛髪ビジネス」も活発になっている。インターネットでは「生え際に負けない」「夏の植毛はメリットが多い」といった広告があふれ、スカルプケア商品が無数に販売されている。白髪や脱毛を防ぐヘアケア専門店「詩碧曼(Sipimo)」は2012年に設立以降、国内の約60都市に約2000店舗を構えるようになった。顧客のほとんどが女性だ。中国の植毛業界トップ企業、雍禾医療(Yonghe)は昨年末、植毛企業として初めて香港証券取引所に上場をした。

「ヘアケアや植毛で抜け毛を防ぐ効果は薄い」「ライフスタイルの見直しこそ必要」という冷静な声もあるが、コンサルティング会社の灼識諮詢(CIC)によると、抜け毛に悩む人は2026年には3億4300万人に増え、毛髪関連のビジネスや医療・美容の市場総額は2030年には1381億元(約2兆8279億円)になると予測している。(c)東方新報/AFPBB News