■伝わる「伝統」

 目撃情報から、キバタンは単独でごみ箱のふたを開けられることが分かっている。まず、ごみ箱の前面の端にとまり、くちばしでふたを持ち上げる。そして、くちばしでふたを支えたまま、後方のちょうつがいの方ににじり寄って、ふたが後ろに倒れるまで開けるのだ。

 以前発表された研究によると、キバタンは仲間の技を見て学ぶ。技は伝わり、特定の生息場所で「伝統」となっていく。

 ごみが散らかることにいら立った人間が新たな対策を講じても、キバタンは対応する。ドイツのマックス・プランク研究所(Max Plank Institute)で行動科学を研究するバーバラ・クランプ(Barbara Klump)氏は、人間が講じる対策の攻略法を習得するのに伴い、キバタンと人間との間で「段階的な進歩と反復」が起きていると説明する。「これが自分にとって最も興味深い点だ」

 今回の研究では、インターネット経由でアンケート調査を行い、ごみ箱3283個の状況を調べた。一部のキバタンはゴム製のヘビの模型を無視したり、ふたの上のれんがを落としたりするなど、簡単な防御なら破れることが分かった。

 それに対し、ふたの重りを固定したり、ふたが開き切らないようちょうつがいに細工したりといった、より強力な対策には、今のところキバタンは対応できていない。

 こんな厄介者のキバタンだが、愛着を抱いているスタンウェルパークの住民は多い。

 カフェ「ウルワツ・ブルー(Uluwatu Blue)」を営むキャサリン・アースキンさん(48)は、食べ物が大好きなキバタンを「空のネズミ」と呼ぶ。「美しいけど本当にうるさい」。それでも「大好き」だと話した。(c)AFP/David WILLIAMS