【9月7日 AFP】「われわれには他国を攻撃する道徳的権利などなかった。それが最も近い国ならなおさらだ」。ロシア軍の精鋭部隊、空挺(くうてい)部隊に所属していた兵士が、ウクライナに侵攻したロシア軍の内部事情を暴露し、身に危険を感じて政治亡命するため、8月末にフランスに入国した。

 内部告発したのはパベル・フィラティエフ(Pavel Filatiev)さん(34)。ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が2月にウクライナ侵攻を命じた際、フィラティエフさんが所属していた空挺部隊は同国南部に派遣された。目の感染症で前線を離れるまで、南部ヘルソン(Kherson)やミコライウ(Mykolaiv)の周辺で2か月間従軍した。

 フィラティエフさんは8月、ロシアのSNS「フコンタクチェ(Vkontakte)」に、ウクライナ侵攻の際に軍用車に記されたZなどの文字にちなみ「ZOV」と題した141ページの暴露文書を掲載した。

■「混沌と腐敗」

 この中で、ロシア軍は侵攻開始前も訓練や装備が不十分で、機能不全に陥っていたと指摘していたフィラティエフさん。ロシア軍の内情についてAFPに対し、「年を追うごとに混沌(こんとん)と腐敗は深まっていった。腐敗や無秩序、投げやりな姿勢は、許容できない段階に達した」と語った。

「(入隊した)最初の数か月間はショックで、これは何かの間違いだと自分に言い聞かせていた。その年の終わりには、このような軍隊の下で軍務に服したくはないという気持ちになっていた」と振り返る。

 フィラティエフさんは「もし平時に軍隊が混乱状態にあり、腐敗して無気力なら、戦時下や戦闘時には、こうした状態が一層悪化し、プロ意識の欠如はより顕著になる」と話した。

「旧ソ連から継承した軍隊を破壊」するのに大きな役割を果たしたのは、政権で権力を握っていた人々だと批判する。