■滞在許可申請の大量却下

 同様の報告が相次いでいる。申請者は、更新却下の理由について合理的な説明はなかったと口をそろえる。

 ウクライナに滞在するベラルーシ人はほとんどが政治亡命者で、ロシアとの戦いに大々的に動員された。ウクライナ政府は、ベラルーシ人に対する政策に変更はないとしている。

 しかし、ベラルーシからの政治亡命者を支援するキーウのNGO「フリー・ベラルーシ・センター(Free Belarus Centre)」などの人権団体によると、滞在許可証の発行や更新の申請は「大量却下」となっている。

 ウクライナ在住のロシア人17万5000人も、同じ問題に直面している。こうした指摘について、ウクライナ国家移民局はこれまでのところ取材に応じていない。

 移住して17年になるミュージシャン・音楽プロデューサーのアンドレイ・シドルキンさん(41)は、ウクライナの市民権を取得しようとしていた。その時、侵攻が始まった。

 滞在許可の更新を申請したところ、却下された。裁判所に不服申し立てを行ったが、移民局は再考を拒否しており、効果があるかは不明だ。

 いずれにせよ、ロシアに帰国するのは「問題外だ!」とシドルキンさん。「帰っても意味がない。刑務所で15~20年過ごす羽目になるだけだ」とAFPに語った。

 ウクライナ側に協力したためだ。侵攻開始当初、ウクライナ軍に入隊しようとしたが認められなかった。代わりに、火炎瓶を作ったり、キーウの美術館から収蔵品を避難させるのを手伝ったりした。

■「誰も私たちを必要としていない」

 メッセージアプリのテレグラム(Telegram)に3月に立ち上げられたチャットグループ「ウクライナのロシア人」には約1300人が登録し、恐怖心や不満を口々に訴えている。匿名を条件に取材に応じたモデレーターのエフゲニアさんによれば、「まだ誰も国外退去処分になってはいない」ものの、「特に前線に近い小都市で」問題が起きている。

 パチョムキナさんに関しては、ブチャ当局の手助けで最終的に国外退去処分が取り消された。ただ、就労は認められず、行政手続きは棚ざらしになっている。

 そろそろ我慢も限界だ。パチョムキナさんは涙を流しながら「私たちベラルーシ人は、無名の存在になってしまった。誰も私たちを必要としていない。でも、私たちの敵は同じ。その敵と戦わなければいけない。逃げてはだめ!」と訴えた。(c)AFP/Thibault MARCHAND