【9月4日 AFP】よろいかぶとに身を固めた数十人が死んだ兵士を演じる中で、ロシア中世の英雄アレクサンドル・ネフスキー(Alexander Nevsky)に扮(ふん)した男性が剣を振り上げ大声でうなった。

「この地はロシアのものだ、昔も今も、これからもだ!」

 エストニアとの国境沿いにあるチュド湖(Lake Chudskoe)周辺は、8世紀前に戦場となった場所。ネフスキーはここで、ロシアにローマ・カトリックへの改宗を迫ったドイツ騎士団(Teutonic Knight)を撃退した。

 1242年4月、凍った湖上での決戦は「氷上の戦い(Battle of the Ice)」として知られ、今もロシアの偉大な勝利として祝われている。

 この再現イベントに参加した数百人の歴史愛好家にとって、その勝利はとりわけ現在の状況と重なって響く。ロシア政府は現在進行形のウクライナでの戦いを、西欧との歴史的対立の一部として描いているからだ。

 退役した元落下傘兵のオレグ・ヤコントフさん(56)は剣と盾を手に、「われわれは祖先が戦ったのとまさしく同じように、欧州と戦っているのです」と額に汗をにじませて語った。

 再現イベントに参加したウラジスラフ・バシリエフさん(23)も息を切らしながら「私にとって、ネフスキーは祖国防衛と勝利を象徴する人物です」と話す。

 近くには、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とロシア正教会の最高指導者キリル総主教(Patriarch Kirill)によって昨年9月に除幕されたネフスキーの巨大な像が立っている。

 この日の再現イベントに集まった人々にとって、ネフスキーの現代版が誰であるかは説明するまでもない。

「当然ながら、わが大統領がその仕事を引き継いでいます」と参加者のオレグ・ダビドフさん(52)。「ロシアの防衛、国力、安全保障の全てが問われているのです」 (c)AFP/Romain COLAS