■つくり出した「人格」

 ベネベヌート氏は、子ども時代に近所でサッカーをしない男子に対し、同性愛者をさげすむ言葉が使われていたことを覚えている。そのことでサッカーが嫌いになったが、とにかくプレーして周囲に溶け込もうとした。

 その後、13歳のときに見た1994年のW杯(World Cup)で審判のカラフルなユニホームに魅了され、近所のサッカー試合ではプレーする代わりに審判を務めるようになった。それが「サッカーに関わるカムフラージュ的な方法となり、性的指向を隠す人格をつくり出した」。

「レフェリングが私に与えたものは何か? 権限、強さ。その場の責任者で、ルールを決める役割だ。サッカーでは脇役でありながらも、非常に男性的な仕事だ」

 審判の仕事に情熱を見いだすと、2009年にミナスジェライス州の選手権でプロとしてデビュー。その後はブラジル1部リーグや国内カップ戦での仕事を経てビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)のスペシャリストとして腕を磨き、昨年には国際サッカー連盟(FIFA)の認定を受けた。

 サッカーには相反した感情を持ちながらも、よりどころにもなっているというベネベヌート氏。「サッカーを愛してはいない。それはファンの感情だ」と言うが、「好きにはなれた。サッカーがなければ審判もできなかった」と話す。