【8月14日 AFP】総合格闘技大会「UFC(Ultimate Fighting Championship)」の世界王者イリー・プロハースカ(Jiri Prochazka)は若い頃、母国チェコのサッカーチームのフーリガンだった。そこから彼は日本の古い書物に触発されたりしながら、ストリートファイトから総合格闘技へと進み、チャンピオンになった。

 荒れた少年時代を過ごしたプロハースカは8年前、宮本武蔵(Miyamoto Musashi)が書いた17世紀の書物「五輪書(The Book of Five Rings)」を渡され、「戦士になる」という目標をついに見つけた。

「人は自分自身を見つめ、規則に従わなければならない。難しい状況でも誠実で、勇敢で、冷静でいなければならない」。それが五輪書と「武士道」から得た学びだという。

 プロハースカは6月、シンガポールでグローバー・テイシェイラ(Glover Teixeira、ブラジル)とのUFC世界ライトヘビー級タイトルマッチに臨み、5ラウンドの一進一退の死闘の末にチェコ選手初のUFC王者に輝いた。ぼろぼろになったプロハースカは敗戦寸前にも見えたが、そこから残っていた力を何とか振り絞り、チョークで一本勝ちを収めた。

「自分のスタイルは予測不能だと言う人もいる」というプロハースカ。「でも自分は予測のつかないことをしているつもりはない。落ち着いて攻撃する隙をうかがっているだけだ。相手の弱点を見つけ、それから攻撃するんだ」と話す。

■質素な環境で自らを研ぎ澄ます

 故郷ブルノ(Brno)から車で30分の森にぽつんと立つコテージで、電話インタビューに応じたプロハースカは、質素な環境に身を置くことで一人で練習に集中できると説明した。コテージには電気は通っているが水道はないため、水は井戸まで毎日くみに行かなければならない。

 プロハースカはコテージの外に電話を向け、森の中に造った「道場」や、現地の木材を使って自作したトレーニング器具を見せてくれた。髪の毛をちょんまげ風に結った29歳は「人は誰しも、何が自分に最適かを見つけなければならない。自分にとってはこれが一番なんだ」と言う。

「瞑想(めいそう)をして、トレーニングをして、自分が送りたい生活を送る」