■ウクライナ侵攻が影落とす

 武生特殊鋼材の河野通郎(Michiro Kono)代表取締役社長(44)は、折れ剣をそのまま加工したり、たくさん集めて再溶解したものを使用したりしながら他の製品にも再生できないか研究中だ。利用方法の一つが、フェンシングの剣への再生だ。

「製品規格上の長さや真直性に加え、安全性を測定する器具も必要なので道のりは長い」と河野氏。作業性や使い勝手よりも安全性がハードルとなるが、「可能性でいうとできると思っている」と話した。

 協会の鈴木代表によると、フェンシングの剣は主にフランスとウクライナで生産されており、ロシアによるウクライナ侵攻が、剣の供給に影を投げ掛けている。

 見延選手は、「ハルキウ(Kharkiv)にある工場は止まっている。職人も避難を余儀なくされているようで、日本への仕入れも滞っているようだ。困難な状況が続いている」と語った。

 折れた剣から再び剣を作ることができれば、新たな選択肢になる。「最終的には剣を生み出して、(フェンシングを)始める子どもたちも手に取りやすい形にもっていけたら理想かな」と、期待を膨らませた。(c)AFPBB News/Marie SAKONJU/Shingo ITO