■フィンランド行きのバスは満員

 ロシアが7月15日に新型コロナウイルスの感染対策として導入していた旅行の制限を撤廃して以降、フィンランドを目指すロシア人旅行者は着実に増えている。フィンランドは6月末、観光客に対する入国制限を撤廃した。

 7月の入国者数は18万5000人以上に上った。新型コロナの感染拡大前の水準には及ばないものの、6月の12万5000人からは増加した。地元メディアによると、フィンランドは7月、ロシア人に対して新たに1万件を超すビザを発給した。

 サンクトペテルブルクのバス運行会社は、フィンランド旅行の需要が拡大していると報告している。

 運行会社バルト・カー(Balt Car)のセルゲイ・イワノフ氏は、「過去数週間は2日に1回の頻度で旅行を提供しているが、毎回満員だ」と語った。多くは、フィンランドから空路で別の目的地を目指すという。

■「ばかげたアイデア」と反発も

 多くのフィンランド人はウクライナとの連帯感を持っている。だが、フィンランドのロシア国境の街にとって、ロシア人観光客は重要な収入源だ。ラッペーンランタ(Lappeenranta)市の多くの事業主は、ロシア人観光客が再び姿を消す可能性を懸念している。

 ロシア国境から数分のところにあるスーパーマーケットの経営者モハマド・ダルウィッチ氏はビザ発給制限について、「最もばかげたアイデアだ。普通のロシア人を孤立させて、何を得るというのか」「地元の人々や事業に大きな問題を引き起こしている」と訴えた。

 国境地帯に住む人々はこれまで、相互に密接な関係を保ってきた。しかし、新型コロナの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻で、劇的に変化した。

 スロフツェフさんは、フィンランド入国のための5年間有効のビザを所持し、年間最大10回はフィンランドを訪れているが、新たな制限が導入されれば、フィンランドに入国できなくなると懸念している。「そうなれば、とても悲しく残念だ。早く戦争が終結するよう望んでいる」 (c)AFP/Elias HUUHTANEN