ロシアの脅威に直面するフィンランド、軍事訓練受ける市民急増
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【5月24日 AFP】フィンランドの首都ヘルシンキにあるサンタハミナ(Santahamina)島で毎週末、一般市民向けの軍事訓練が行われている。隣国ロシアからの防衛策として北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請したフィンランドでは、軍事訓練への参加希望者が急増している。
人口約550万人のフィンランドの常備兵は約1万3000人だが、予備役は90万人に上り、このうち有事の動員可能数は28万人となっている。
同国はロシアと1300キロにわたる国境を接しており、ロシアのウクライナ侵攻開始以降、この任意の防衛訓練への参加申し込みが急増している。平時の参加希望者は約600人だったのに対し、侵攻開始直後の2月最終週には6000人から申し込みがあった。
フィンランドは第2次世界大戦(World War II)中、旧ソ連と2度激しい戦いを繰り広げ、結果、広大な領土を旧ソ連に割譲した。
ウクライナへの侵攻開始から3か月足らずの今月18日、フィンランド政府は西隣に位置するスウェーデンと共にNATOへの加盟を正式に申請した。世論や政界における加盟への支持が広がり、数十年にわたり国是としてきた軍事的中立から方針転換を図った形だ。
両国の加盟申請に怒りを示したロシアは、「対応」を講じると警告した。
サンタハミナ島では、地図の読み方や森での野営方法といった基礎から、格闘術や爆発物探知、また狙撃銃や対戦車兵器の使い方といった上級技術まで、多様な訓練が受けられる。
ただ、さまざまな層に向けた訓練が用意されているとはいえ、参加者の大半は、過去に習得した技能を改めて確認しておきたいと希望する予備役だ。
普段の仕事は金融コンサルタントだという男性参加者(48)は「1990年代に紛争後のコソボで従軍した。今は当時と似た雰囲気を感じる。だからもし次があるのなら、備えておく方が良い」と話した。
欧州の大多数の国とは異なり、フィンランドは国防を徴兵制に頼っている。徴兵対象は18~60歳の男性で、女性は志願制となっている。毎年、若者2万人以上が徴兵され、6~12か月間兵役に就く。徴兵期間が終わると予備役となる。
この市民向け軍事訓練を実施する団体の関係者は、「有事動員可能兵力の約96%を占めるのが予備役だ。つまり予備役が、フィンランドの国防において極めて重要な役割を担っている。成人人口の大多数が、人生のある時点で軍事訓練を経験している」と述べた。(c)AFP/Elias HUUHTANEN