【8月3日 AFP】貧困家庭の子どもは、裕福な子どもと友達になれる地域で育つと、成人になってからの平均収入が増える可能性がある──。フェイスブック(Facebook)ユーザーの「友達」関係を分析した二つの研究が1日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 子どもが貧困から抜け出す上で、裕福な友人を持つことは有意な要素だと長年考えられてきたが、これまではサンプル数が少ないか、データが限られていた。

 米国を拠点とする研究チームは今回、25〜44歳の米国人のフェイスブックユーザー7200万人の「友達」関係についてのデータを分析。フェイスブック上の「友達」が現実の友人関係を反映している尺度と見なし、前例のない規模と精度でこのテーマを検証した。使用データのプライバシーは保護した状態で実施した。

 研究チームは、社会的・経済的地位、年齢、地域などの要素によってユーザーを階層分けするアルゴリズムを使用。富裕層と貧困層がどの程度交流しているかを測定し、「経済的連結性」という指標をつくり、社会的・経済的レベルが平均以上と以下の友人の割合を調べた。

 この指標を米国の全郵便番号における子どもの貧困脱出度についての先行研究と比較したところ、結果は「驚くほど似ていた」と、二つの論文の筆頭執筆者である米ハーバード大学(Harvard University)の経済学者ラジ・チェティ(Raj Chetty)氏は述べている。

 1番目の研究では「経済的連結性」が「経済的流動性の予測因子として最も影響が大きいものの一つ」であることが示された。

 2番目の研究では、富裕層と貧困層の子どもが友達になりやすい地域がある理由を探った。そこには、二つの大きな要因があった。

 一つは学校や居住地域など、両方の集団がどの程度接触しているかという点だ。

 富裕層と非富裕層の社会的断絶を生んでいる原因のおよそ半分は、互いに接する機会がないことにあるが、たとえ両者が同じ学校に通っていたとしても、親しくはなりにくい。研究チームは、「フレンド化バイアス」と呼ぶこうした状態が、社会的断絶を生む残りの半分の要因だとした。

 もう一つは、両者が友人になるかどうかに「どこで出会うか」が大きく影響しているという点だ。

 例えば、教会のような宗教施設で育まれた友情は「階級の壁を越える可能性が非常に高い」とチェティ氏は指摘している。

 同氏は、他の国でも同様の結果が得られるはずだと予想し、各国政府や世界中の研究者に対し、自国のフェイスブックユーザーのデータを用いた研究を呼び掛けている。(c)AFP/Daniel Lawler