■国境を越えて広がる偽情報

 東欧のソーシャルメディアには、ウクライナナンバーの高級車の画像や、裕福そうなウクライナ人が政府の支援に列をつくっているのを見たという出どころ不明の匿名の情報があふれている。国によって内容はさまざまだが、根底にあるメッセージは同じだ。

 ウクライナ人が「われわれから」資源を奪っている、というものだ。

「難民は常に、働かず給付金を待っている移民、高級車、『医療ツーリズム』や『給付金ツーリズム』といった文脈で語られる」と、ネット上の偽情報を監視するボランティアネットワーク「チェコの妖精たち(Czech Elves)」は6月の報告書で指摘している。

 ポーランドでは、偽情報を広めていることで知られるブログに最近、ウクライナ難民は無料で商品券をもらっているのに、困窮するポーランド人は何ももらえず放置されているという誤った主張が掲載された。

 ルーマニアでは、「ウクライナ難民の9割は富裕層で、ウクライナ税関に1000~1500ユーロ(約14万~21万円)の賄賂を渡して国境を越えてくる」との主張がフェイスブック(Facebook)に投稿された。

 難民受け入れ数が人口比で最も多いチェコでは、ウクライナ難民の4人家族が受け取れる給付金は月額9万チェコ・コルナ(約50万円)で、一般家庭の月収よりはるかに多いとする偽情報が拡散された。

 ソーシャルメディアで共有されている典型的なイメージとは裏腹に、チェコ労働局のデータによれば、ほとんどのウクライナ難民は入国後すぐに働き口を探し始め、建設、医療、清掃などの肉体労働に就く人も多い。