【7月27日 AFP】米ニューヨーク市は26日、世界保健機関(WHO)にサル痘ウイルスの名称変更を求めた。サル痘という名称がレッテル貼りにつながり、患者が治療をためらうのを避けるためとしている。

 WHOは先週末、サル痘について、最高度の警告である「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。ニューヨーク市では累計で1092人の症例が報告されており、米国の都市では最多となっている。

 同市のアシュウィン・バサン(Ashwin Vasan)公衆衛生局長は、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長に宛てた26日付の書簡で、「『サル痘』に関するメッセージ発信が、すでに弱い立場に置かれているコミュニティーに壊滅的な影響を及ぼし、烙印(らくいん)を押す恐れがあることに懸念を募らせている」と述べた。

 WHOは先月開いた記者会見で、サル痘ウイルスの名称変更に言及していた。

 バサン氏は、サル痘は名前とは裏腹に霊長類に由来するものではないと指摘。エイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)流行初期の誤情報による悪影響や、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領が新型コロナウイルスを「チャイナウイルス」と呼んだことでアジア系コミュニティーへの人種差別を悪化させたことに言及した。

 その上で「現在の流行を表現するために『サル痘』という用語を使用し続けることは、特に黒人をはじめとする有色人種や性的少数者(LGBTQIA+)に対する差別やレッテル貼りのトラウマを再燃させることになりかねない。こうしたことが原因で患者が必要な医療を受けるのを避ける可能性もある」と述べた。

 サル痘は昔からアフリカ中部や西部で流行しており、誰もが感染する恐れがある。しかし、欧米での感染拡大はこれまでのところ、主に男性同士で性交渉をする人の間に集中している。(c)AFP