【7月24日 AFP】ウクライナ出身の元男子テニス選手、セルジ・スタホフスキ(Sergiy Stakhovsky)氏(36)は23日、ロシアのテニス選手が処罰を恐れ、母国のウクライナ侵攻について口を閉ざしていることに「失望している」と話した。

 ポーランドのクラクフ(Krakow)で、スタホフスキ氏は報道陣に対して「彼らは皆、自分の命運を案じている。監獄に行きたくないのだ。子どもや女性が死ぬのを気にしていない」と話し、「もし監獄に数週間、場合によっては1か月入るにしても、その代わりに1人の命を救えるのであれば、自分ならそうする」と主張した。

 スタホフスキ氏は、女子の世界ランキング1位イガ・シフィオンテク(Iga Swiatek、ポーランド)が主催するチャリティーイベントに参加するためクラクフを訪れた。イベントの売り上げはウクライナ侵攻の影響を受けた子どもや若者のために使われることになっている。

 他の特別ゲストとしては、女子の元世界2位であるアニエスカ・ラドワンスカ(Agnieszka Radwanska)氏や、ウクライナのトップ女子選手のエリナ・スビトリーナ(Elina Svitolina)、サッカー欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)で優勝経験のあるウクライナ代表のレジェンド、アンドリー・シェフチェンコ(Andriy Shevchenko)氏も登場した。

 今年現役を引退し、侵攻後に予備役としてウクライナ軍に登録したスタホフスキ氏は、自身の経験談として、ロシアの選手たちは個人的に顔を合わせたときも沈黙を貫いていたという。

「ローラン・ギャロス(Roland Garros、全仏オープン)の期間中、パリで何人かロシアの選手と会った。名前を出すつもりはないが、みんな私に気づくときびすを返して立ち去るか、顔をそむけるかだった」

「みんな昔から知っている選手で、彼らがキャリアを築いていく様子も見てきた。だからこそ、控えめに言って失望している」

 数少ない例外として名前を出したのは、男子のアンドレイ・ルブレフ(Andrey Rublev)と女子のダリア・カサキナ(Daria Kasatkina)で、スタホフスキ氏は二人が侵攻に対する気持ちを話していることを称賛した。

 スタホフスキ氏は「ルブレフはもしかしたら、公の場で最初の週から戦争反対を訴えていた唯一の選手かもしれない」とコメント。ルブレフが2月のドバイ選手権(Dubai Duty Free Tennis Championships 2022)で、テレビカメラのレンズに「戦争はやめて」とメッセージを書いたことを取りあげた。

 一方、ロシアの女子選手で世界最高位につけるカサキナは、先日ユーチューブ(YouTube)に投稿されたインタビューで、侵攻は「悪夢」だと発言。また、自身がレズビアンであることを公表し、同性愛に対するロシアの姿勢を批判した。

 スタホフスキ氏は「ダリアのことは大いに称賛する。彼女なりの形での英雄だ」とたたえ、「こういうロシア人がもっといれば、この戦争は始まらなかっただろう」と話した。(c)AFP/Anna Maria JAKUBEK