【7月2日 AFP】男子テニス、ダブルスのスペシャリストであるデニス・モルチャノフ(Denys Molchanov、ウクライナ)は、ロシアとの紛争が激化している中でテニスに集中するのが難しいと認め、母国に戻って戦闘を支援することを考えているという。

 ロシア出身でカザフスタン国籍のアンドレイ・ゴルベフ(Andrey Golubev)とペアを組み、ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2022)に出場していたモルチャノフは、2月下旬にロシアによる侵攻が開始された直後にウクライナを逃れた妻と娘とともに、現在はクロアチアの首都ザグレブを拠点としている。

 ダブルスの世界ランキングで97位につけるモルチャノフは、ウィンブルドンの初戦でペドロ・マルティネス(Pedro Martinez、スペイン)/ジョン・パトリック・スミス(John-Patrick Smith、オーストラリア)組に敗れた後、「ずっと考えていたことだ」として、「祖国がこんな状況の中でプレーするのは難しい。今はテニスどころではない」と語った。

 現在35歳のモルチャノフは戦争が始まる直前、ロシアのアンドレイ・ルブレフ(Andrey Rublev)とペアを組んで仏マルセイユ(Marseille)で開催されたオープン13(Open 13 Provence 2022)に出場し、ATPツアーのダブルスで初優勝を達成。直後に新型コロナウイルスに感染し、同国にとどまっていた。

 モルチャノフは当時を振り返り、「マルセイユの大会を終えて戦争が始まったとき、コロナウイルスのせいでフランスに足止めされて帰国できなくなったのは幸運だった」と話し、「もし帰国していたら、国外には出られなかった」と続けた。ウクライナでは18歳から60歳までの男性は徴兵の対象となるため、国外に出ることはできない。

 妻のカテリーナさんと4歳の娘ステファニアちゃん、そして両親は車に飛び乗って避難したという。しかし、モルチャノフの両親は国外で数週間を過ごした後、ロシア軍の撤退後に大勢の市民が遺体で見つかった首都キーウ近郊のブチャ(Bucha)にある自宅へ戻った。

 モルチャノフは、男子の国別対抗戦デビスカップ(Davis Cup)の元パートナーであるセルジ・スタホフスキ(Sergiy Stakhovsky)氏に倣うことを考えているという。同氏は今年現役を引退し、その後はウクライナの予備役に加わっている。

「彼はさまざまな方法で支援している一方で、兵士のような支援はできない。それでも、人道的なことやいろいろな面において、さまざまな方法でウクライナを大いに手助けしている」

 自身の兄弟もウクライナ国内でボランティア活動をしており、自分も戦争でどのような支援ができるか考えているというモルチャノフは、「誰もが戦争はあっという間で、1か月以上は続かないと考えていた。攻撃を仕掛けてこちらに警戒させれば、それで終わるとね」と話した。

「だけど、現在戦争は拡大しているし、終結しなくて自分もそこへ止めに行こうと決断する日がくるかもしれない。そうしなければならない日が来るかもしれないと感じている」 (c)AFP/John WEAVER