【7月22日 東方新報】日本発のバーチャルアイドル文化の影響を受け、中国でも独自のバーチャルアイドルが爆発的人気を遂げている。最近は「中の人」がグループを脱退したり失踪したりするトラブルも目立っている。

 6月19日、中国版ニコニコ動画といわれる動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili)」で、ギターを抱えた男性バーチャルアイドル「Shoto」が初の生放送ライブをすると、2時間で100万元(約2031万円)を超える投げ銭が集まった。Shotoは5月9日にビリビリでデビューしたばかりだが、犬の耳としっぽを持ち、紫色の髪と瞳という格好良さとかわいさを兼ね備えたキャラクターがあっという間ファンを集めた。中国ではこうしたバーチャルアイドルが次々と誕生している。

 中国で最初にブレイクしたバーチャルアイドルは、2012年7月12日にデビューした洛天依(Luo Tianyi)だ。ボーカロイド音声技術、ホログラム投影、拡張現実(AR)リアルタイムモーションキャプチャー技術を駆使し、初音ミク(Hatsune Miku)やキズナアイ(Kizuna AI)のような絶大な人気を誇る。1万人収容コンサートチケットも発売から1分以内に完売。ネスレ(Nestle)やケンタッキーフライドチキン(KFC)、ピザハット(Pizza Hut)などのCMに起用され、2021年には中国版紅白歌合戦といわれる「春節の夕べ」に出演した。洛天依の成功を受けて2019年ごろから次々とバーチャルアイドルが登場し、Z世代(1995~2009年生まれ)を中心に大きな支持を集めている。

 バーチャルアイドルをはじめとしたVチューバーたちは「ビリビリ」を主戦場としており、その数は2021年段階で4000人を超えるといわれる。アイドルやVチューバーを演じるタレントは、日本語の「中の人」からそのまま「中之人」と呼ばれる。

 バーチャルアイドルを巡っては最近、トラブルも発生している。5人組のアイドルグループ「A-SOUL」の公式アカウントは5月10日、メンバーの珈楽(Carol)が健康と学業の問題を理由に「休眠」に入ると発表した。A-SOULは2020年11月にデビューし、2000万人のファンを擁する。ところが休眠発表後、ファンが珈楽の「中の人」のSNSアカウントを特定し、「深夜3~4時まで残業」「ダンスレッスンは自費」「演技中にケガをしてもスタッフは無視」「責任者にののしられた」などの書き込みが見つかった。メンバーがいくら稼いでも低い固定給で酷使されている疑惑が浮かび上がり、芸能プロダクション側は事実を否定しているが、ファンからは「もうA-SOULを応援しない」というボイコット表明が相次いだ。

 また、美少女Vチューバーの柏凜(Porin)が5月21日、半年間活動をしていなったことについて「半年前に誘拐され、人身売買の被害に遭っていた」と告白。事務所側は5月末、「タレントの告白は虚偽」と声明を公開し、彼女のアカウントを永久停止すると発表した。

 バーチャルアイドルブームが過熱する中、「開盒(箱を開ける)」と言って「中の人」の個人情報を暴露する行為も出ている。中国のバーチャル・デジタルヒューマンの市場規模は2030年に2700億元(約5兆4826億円)に達すると予測されているが、市場の拡大と同時に今後もさまざまな課題が浮上してきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News