【7月18日 AFP】英南東部カンタベリー(Canterbury)近郊で18日、飼育下で育った雌のヨーロッパバイソン3頭が森に放された。バイソンの再導入を通じて、人間の干渉を最小限に抑えながら自然環境を復元・管理する野心的なプロジェクトだ。

 ヨーロッパバイソンは欧州最大の陸上哺乳類で、かつて英国に生息していたステップバイソンの近縁種に当たる。同国の野生環境に戻るのは数千年ぶりとされる。野生のヨーロッパバイソンは、狩猟や生息地消失により1927年に絶滅している。

 今回の5か年計画を主導する自然保護団体ワイルドウッド・トラスト(Wildwood Trust)のマーク・ハッベン(Mark Habben)氏はAFPに対し、「本当に記念すべき日だ」と喜びを示した。

 バイソンが牧草や樹皮を食べ、木を倒し、泥や砂を浴び、森の中の地面を掘ることによって、他の動物の生息地が形成される効果が生まれる。ハッベン氏は今回の取り組みについて「環境を復元し、英国の原生林とそこに生息するあらゆる生き物を復活させるため」の活動だと説明している。

 自然保護団体ケント・ワイルドライフ・トラスト(Kent Wildlife Trust)が所有するこの森では、バイソンの自然繁殖が試みられる。雄のバイソンはドイツから来る予定だが、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)に伴い動物輸入手続きが煩雑化しているため、到着が遅れている。

 寄付金を中心に110万ポンド(約1億8000万円)を投じたこの生息地復元プロジェクトでは、英国の生態系が気候変動と生物多様性の深刻な損失に対処できるよう支援することも主要目的の一つとしている。

 ハッベン氏は、欧州の一部が熱波に見舞われ、英国でも観測史上最高気温が予想される際にバイソンが野生に放されたのは「極めて大きな意味がある」との見方を示し、「バイソンを放すことで生態系の回復を助け、それが環境の復元につながり、気候変動に何らかの影響を与えられることを願う」と述べた。(c)AFP/Joe JACKSON