【12月30日 AFP】巨大なオークの老木を途中まで登り、太い幹に開いた小さな穴をのぞく。中で一斉に羽音を立てるハチを見て、フィリップ・サルバニー(Filipe Salbany)さん(55)は興奮を抑え切れなかった。

「素晴らしい──女王バチが産卵しているぞ!」。地上約15メートルの高さから、命綱をつけたサルバニーさんが叫ぶ。

 サルバニーさんは南アフリカ出身の生理学者で、自然保護活動家だ。この1年半、英イングランド中南部オックスフォード(Oxford)郊外のブレナムエステート(Blenheim Estate)にある古い森で、ハチの巣を探し回っている。

 このハチは希少な生態型(同種の生物が環境に適応して分化し、その形質が固定した型)であると、サルバニーさんは考えている。オックスフォードシャー(Oxfordshire)の田園地帯の片隅で、数世紀にわたって他の系統と交わらずに生息してきた可能性があるという。

 今回の発見を裏付けるために現在、DNA鑑定が行われている。固有種の野生の子孫が発見された可能性に、ブレナムだけでなく多くの人々が興奮している。

 このような個体群は、病気や殺虫剤、外来種との競争などによって、ほぼ姿を消したと考えられていた。

 だが、サルバニーさんは世界各地に同様の可能性が残されていると考える。「さまざまな国にある古い森林でもっと(調査を)行い、現地のハチの亜種を発見できれば(中略)環境についてさらに多くのことを学んだり、農業システムを改善したりできる」と木の上からAFPに語った。

 そして生き延びている種をよく観察し、化学物質や殺虫剤、人間の介入などハチに影響を与えている要素を把握すべきだと言う。