■「できることは何もない」

 だが澎湖の住民は、歴史を通じて何度も地政学的な力に翻弄(ほんろう)されてきた。

 郷土史家で建築士のチェン・インジンさん(67)は、「澎湖は防衛が困難な場所です」と指摘する。「平たんで沿岸部が多く、(敵の)上陸を防ぐのが非常に難しいです」

 かつてはオランダ、フランス、日本が何なくこの地に侵略した。過去から現代まで戦争の痕跡は至るところにある。

 澎湖諸島には天弓に加え、対艦ミサイル「雄風2(Hsiung-feng II)」の基地もあり、また西嶼には、あらゆる攻撃計画に対して不可欠な早期警戒レーダー基地もある。

 これらの理由から、中国政府は台湾本土を攻撃する前に、同諸島の奪取を試みる可能性が考えられる。その狙いは同地の軍事施設の機能を停止し、再補給基地とすることだ。

 中国人民解放軍に対抗できると考える住民はほとんどいない。

「中国の艦船が島を包囲して、それで終わりですよ。受け入れる以外、われわれにできることは何もありません」とチェンさんの友人のワン・シューションさんは言った。