■衝撃を与えた発言

 このアルバムに決定的な影響を与えたのは、リリースの数か月前に英音楽誌「メロディー・メーカー(Melody Maker)」で行われたインタビューだ。

「私はずっとゲイだ。(本名の)デヴィッド・ジョーンズ(David Jones)の時からそうだった」。赤い髪の毛をツンツン立て、体にぴったりしたジャンプスーツに赤いブーツというきらびやかないでたちで登場したボウイは語った。

 当時としては衝撃的な告白だった。英国の有名人で同性愛者であることを公表したのはボウイが初めてで、英国内で同性愛行為が非犯罪化されるようになって5年もたっていなかった。

 この宣言によってボウイは、同性愛者の若者や社会から疎外された人々の心を何世代にもわたって支えるアイコン的な存在となる。

 ボウイの世界的な研究家のジェローム・ソリニー(Jerome Soligny)氏は、「時代を先取りした市場戦略だった」として、「(あの発言は)ボウイが生み出した中で最も美しいものだった」と語っている。